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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、中国リスク高まるも横ばい

連載 2022-12-05

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=210円台で売買が交錯する展開になった。中国で新型コロナウイルスの感染被害が拡大したことが上値を圧迫するも、210円台割れは回避された。新型コロナ対策の規制緩和の思惑が下値を支え、週末にかけては逆に210円台後半まで切り返しており、結果的に最近のボックス相場が踏襲されている。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元台後半で横ばいから小幅高となった。中国では新型コロナの新規感染者数が過去最多を更新し、各地でロックダウン(都市封鎖)を含む強力な行動規制が導入された。それに抗議するデモや暴動が多発し、一部では「反習近平」も掲げられるなど、混乱がエスカレートした。

 しかし、政府の対コロナ政策を担当する孫春蘭副首相は11月30日、「オミクロン株の病原性は比較的弱い」、「ワクチン接種が進んでいる」、「政府の知見が蓄積されている」ことなどを理由に、対策は新たな段階に入りつつあるとの認識を示した。保健当局との会合では、ゼロコロナ政策を意味する「動態清零」の言葉を用いないなど、明らかに戦略の変化が始まっていることがうかがえる。マーケットは、ゼロコロナ政策が事実上修正されるとの見方を強めており、資源需要の減退懸念の後退が原油や非鉄金属相場をサポートし始めている。この流れの中で、天然ゴム相場も底固さを見せた。

 また、新型コロナの新規感染者数そのものもピークアウトの兆候を見せている。このまま感染被害が収束に向かうのか、中国政府の対コロナ政策に変化がみられるのかが、引き続き焦点になる。

 一方、産地相場は安値低迷状態が続いている。タイ中央ゴム市場の現物相場は、12月1日時点でUSSが前週比0.5%安の1キロ=44.32バーツ、RSSが同0.6%高の46.82バーツ。一部で豪雨も報告されているが、集荷量に大きな問題は見られず、今年最安値圏での低迷状態が続いている。消費地相場の値動きに対してもほとんど反応しておらず、産地相場は引き続き上値の重い展開を支持している。

 また、これと連動してJPX天然ゴム相場の当限も、値崩れは起こしていないが、今年最安値圏での低迷状態が続いている。サヤは期近から期中限月にかけておおむねフラット化しており、全体的に上値が重いものの、さらに大きく値を崩すには至らない中途半端な値動きになっている。

 為替市場で円高・ドル安圧力が強くなっていることはネガティブ。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペース鈍化がほぼ確実視される中、8月下旬以来の円高水準になっていることは、円建てゴム相場の上値圧迫要因になる。

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