【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、需要悪化リスクが上値圧迫
連載 2022-05-16
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=240円台中盤まで下落する展開になった。中国の新型コロナウイルス感染被害による需要不安が強く、大型連休明け後は改めて下値を切り下げる展開になった。その後は感染被害収束の兆候もみえはじめていることが下値をサポートしたが、それと同時に為替市場で円が反発に転じたことで、円建てゴム相場の上値は重かった。約2カ月ぶりの安値を更新している。
上海ゴム先物相場は、5月9日に1トン=1万2,410元まで値下がりして年初来安値を更新したが、その後は1万2,000元台後半まで小幅切り返している。中国経済のリスク評価が安定せず、乱高下しながらも明確なトレンドを形成できていない。
中国では新型コロナの感染被害が、実体経済に及ぼす影響が強く警戒されている。4月の貿易統計によると、輸出は前年同月比3.9%増、輸入は横ばいとなっており、輸入のみならず輸出環境も大きなダメージを受けたことがうかがえる状態になった。上海市のロックダウン長期化などで需要の落ち込みは当然だが、サプライチェーンの混乱で生産活動にも影響が生じたことで、輸出も2020年6月以来の低い伸び率に留まっている。「ゼロ・コロナ」政策が実体経済に及ぼしたダメージの大きさがうかがえる。
ただ、その中国でも新規感染者数は減少傾向にあり、上海市も約半分の地区で「ゼロ・コロナ」を達成したと発表している。まだ行動規制の緩和・解除には慎重姿勢がみられるが、最悪期を脱したとの見方が上海ゴム相場をサポートしはじめている。新型コロナの影響警戒でさらに売り込まれるのか、最悪期は脱したとの評価で下げ一服から安値修正局面に移行するのかが焦点になる。
産地相場は方向性が定まっていない。タイ中央ゴム市場の現物相場は5月12日時点で、USSが前週比0.8%安の1キロ=63.65バーツ、RSSが同0.5%安の67.88バーツとなっている。急落傾向には一服感がみられるが、上昇と下落を繰り返している。産地では特段の天候障害などは報告されていないが、USSの集荷量が低迷する一方、RSSの集荷量が回復傾向をみせるなど、強弱評価が割れる状況になっている。
一方、為替市場で円安傾向にブレーキが掛かりはじめていることはネガティブ。日米金融政策環境の違いから1ドル=130円台まで円安・ドル高が進行していたが、米長期金利の上昇一服感、不安定なリスク投資環境を背景に、円安にブレーキが掛かりはじめている。このため、為替要因で買いを入れる動きが鈍くなり、調整売りが上値を圧迫している。為替相場の動向も注目されやすい。
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