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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、需要不安で年初来安値更新

連載 2021-09-13

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=200円の節目を下抜き、年初来安値を更新した。昨年10月16以来の安値圏での取引になっている。

 上海ゴム先物相場も1トン=1万3,000元台後半でのボックス相場から、1万3,000元台前半まで値下がりしている。中心限月ベースでは、8月2日以来の安値を更新している。8月19日には1万5,000元台に乗せていたが、1万3,000元割れが警戒される地合に一変している。

 改めてゴム相場の急落傾向が強くなっているが、主に需要サイドのリスクに反応したものである。①新型コロナウイルス「デルタ株」の感染拡大によるグローバル経済の先行き不透明感、②中国経済の減速傾向の加速、③半導体不足による自動車生産トラブルなどが、ゴム相場の上値を圧迫している模様だ。

 新型コロナは、日本国内では感染被害が一服傾向を見せているが、世界全体ではまだ新規感染者数の増加傾向が継続している。ワクチン接種の進展もあって大規模なロックダウン(都市封鎖)導入の動きは限定されているが、それでも人との接触が多い飲食や旅行などの業種を中心に、想定されていたよりも景気減速感が目立つ。9月3日に発表された8月米雇用統計で雇用者数が伸び悩んだのがシンボリックである。

 また、特に中国経済の減速傾向が強いことが、ゴムや鉄鉱石、銅相場などの上値を圧迫している。高インフレ、サプライチェーンの混乱、洪水被害、新型コロナの感染拡大など、さまざまな要因が指摘されているが、早期に景気対策を打ち出す必要性が高いとの議論が活発化するほどに、経済環境は悪化している。

 しかも、半導体不足による自動車工場の稼働停止報告は世界各地で行われており、いつ生産環境が正常化するのか見通しが立たない状況が続いている。タイヤに関しては買替用の販売によって大きな落ち込みは回避できるとの見方も強いが、それでも市場心理の悪化は否めない状況になっている。

 供給サイドでは、新型コロナの感染被害が厳しいベトナムなどの供給不安が維持されるが、タイやインドネシアなどの状況は徐々に改善しており、供給リスクを織り込む必要性は薄れている。タイ中央ゴム市場の現物相場は、9月9日時点でUSSが前週比4.1%安の1キロ=49.61バーツ、RSSが同6.1%安の51.78バーツ。消費地相場の急落地合を追認している。コストの面で下げ過ぎ感も浮上し始めるが、JPXゴム相場は大幅な順サヤ(期近安・期先高)環境を維持している。

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