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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、年初来安値更新が続く

連載 2021-07-19

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=210円水準まで下落する展開になった。特段の新規材料は見当たらないが、改めて年初来安値を更新する展開になっている。チャートが値崩れを起こしており、投げ売りが膨らんでいる模様だ。一応は、新型コロナウイルスの感染被害拡大、中国経済の減速懸念などの影響も指摘することが可能だが、ファンダメンタルズとはかい離した値動きである可能性が高い。

 上海ゴム先物相場も、1トン=1万3,000元台前半で上値の重い展開になった。前週は「上海ゴム相場の上昇」と「JPXゴム相場の下落」が共存するいびつな相場環境になったが、上海ゴム相場の方に調整売りが膨らんでいる。ただ、改めて1万3,000元割れから値を崩すような動きを見せている訳ではなく、決定打を欠いている。

 中国の4~6月期国内総生産(GDP)が前年同期比7.9%増となり、1~3月期の同18.3%増から大きく鈍化したことはネガティブ。一方で、6月貿易収支では輸出が前年同月比32.2%増、輸入が同36.7%増と、一定の底固さを示している。原材料価格の高騰が工業生産に対するダメージになっているが、その一方で景気減速懸念が一気に高まっている訳ではなく、経済指標は強弱評価が交錯している。

 李克強首相は7月13日、コモディティ価格の上昇を抑制するために「包括的な措置」を講じる考えを示している。企業コストの増大、インフレリスクの高まりを警戒している模様だが、具体的な政策の発表がなかったこともあり、マーケットに対する影響は限定的だった。

 タイ中央ゴム市場の集荷量は前週比でやや抑制されたが、大きな変動はみられなかった。東南アジアでは新型コロナの感染被害が深刻化しており、タイ、インドネシア、ベトナム、マレーシアなどで経済活動の抑制も進んでいるが、供給不安をゴム相場に反映させるような動きは限定されている。タイ産現物相場は、7月15日時点でUSSが前週比1.8%安の1キロ=49.77バーツ、RSSが同0.4%安の52.10バーツとなっている。USSは50バーツの節目を割り込んでおり、さらに大きく値下りが進むと農家の売り渋りといった動きが始まるリスクも警戒されるが、現時点では産地主導の値動きは確認できない。JPXゴム相場との連動性が目立つ状況になっている。

 6月の中国新車販売台数は前年同月比12.4%減となり、半導体不足の影響が鮮明になっている。同様の動きは世界各地で報告されており、新車用タイヤ需要環境は悪化している。ただ、中古車市場が過熱化していることもあり、需要不安を織り込むような動きは限定されている。

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