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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、上海ゴム主導で急反落

連載 2021-06-07

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=261.00円をピークに240円水準まで反落する展開になった。5月末にかけては上海ゴム相場の安値修正の動きと歩調を合わせ、JPXゴム相場も押し目買い優勢の展開になった。しかし、6月入りするとその上海ゴム相場が突然に急落したことで、改めて戻りを売られる展開になっている。上海ゴム相場の動向に一喜一憂する展開が繰り返されている。

 その上海ゴム先物相場は、1トン=1万4,000元水準に抵抗を受けて、1万3,000元台前半まで反落している。結果的に5月中旬の価格水準に回帰している。

 上海ゴム相場主導で軟化しているが、目立ったネガティブ材料は見当たらない。5月中旬は中国政府のコモディティ価格統制強化の動きが警戒されて中国コモディティ相場は全面安の展開になったが、その後は鉄鉱石や石炭、銅相場などは安値からの切り返しを見せている。世界経済成長に伴う資源需要拡大期待が強い。しかし、ゴム相場のみがこうした値動きに逆行する形で急落している。

 一般的にこうした値動きはゴム相場に特有のネガティブ材料が浮上した場面で観測されるものだが、足元では特にゴム相場だけが大きく値下りするような材料は見当たらない。投機筋主導の不安定な価格形成が行われている模様だ。

 米国では5月31日のメモリアルデーを終えて、本格的なドライブシーズンに突入している。これまでの行動規制の反動に加えて、経済環境の改善が進んでいることで、今季は行楽需要に対して強気の見方が広がっている。この結果、ガソリン消費拡大の思惑からNY原油相場は2018年10月以来の高値を更新しているが、こうした動きもゴム相場に対して影響を与えることはなかった。合成ゴム価格の値上がりプレッシャーが強まることに加えて、外出によってタイヤの消耗が進みやすい環境はゴム相場にポジティブだが、原油相場に対しても逆行安となっている。

 突然に意味なく急伸、急落する投機色の強い相場展開が繰り返されているため、先行き不透明感が強い。上海ゴム相場が5月と同様に1万3,000元水準で下げ一服となるかが注目されるのみになる。

 タイ中央ゴム市場の現物相場は、6月3日時点でUSSが前週比4.6%安の1キロ=63.05バーツ、RSSが同5.7%安の65.81バーツ。6月入りしてから集荷量が抑制されているが、産地主導の価格形成は見送られている。マレーシアでは6月1日からロックダウンが再開されているが、天然ゴム農園やゴム手袋工場などは規制の対象外になっている。

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