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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、減産期入りも相場は膠着

連載 2021-03-22

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=270円台前半から中盤で膠着化した。3月2日の256.60円をボトムに安値修正を進めていたが、270円台からさらに買い進むような動きはみられず、狭いレンジ内での持高調整に終始した。

 JPXゴム市場では上海ゴム先物相場の動向が注目されているが、その上海ゴム相場は1トン=1万5,000元台前半で膠着化した。1万5,000元割れからの値崩れが回避される一方、本格的に上値を買い進むような動きはみられず、週を通じて膠着状態に陥っている。

 中国・全国人民代表大会(全人代)を終えて買いを入れる動きも見られたが、中国では政策引き締めに対する警戒感がくすぶり続けており、上海ゴム相場は押し目買いと戻り売りが交錯する展開になっている。中国の2月鉱工業生産は前年同月比35.1%増、小売売上高は同33.8%増となり、昨年のパンデミックからの復調を強く印象付ける数値になった。ただ、同統計を受けて上海ゴム相場を買い進む動きはみられなかった。

 新車市場は世界的に改善傾向にある。欧州の一部の国でパンデミック第3波が警戒されていることには注意が必要だが、世界的に経済活動の正常化で消費者マインドの改善も進んでおり、タイヤ需要環境は強気だ。米国では追加経済対策で1人当たり最大1,400ドルの現金給付の振り込みが始まっており、家計部門の支出拡大余地は大きくなっている。

 2月は、中国で新型コロナウイルスの感染拡大、北米で寒波が新車販売環境に影響を及ぼしたとみられるが、3月はその反動もあって強めの重要環境が想定されている。

 一方、産地ではタイなどで減産期型の供給環境に移行している。2月と比較すると集荷量は明らかな落ち込みを見せている。本格的な減産圧力は4月になるが、供給サイドからも需給引き締まり圧力が強まり易い時間帯になる。ただ、タイ中央ゴム市場の現物相場は、3月18日時点でUSSが前週比0.5%高の1キロ=64.13バーツ、RSSが0.7%安の67.07バーツと、ほぼ横ばいに終始している。産地でも上海ゴム相場の動向が重視されており、産地主導で上昇トレンドを形成するような勢いは見られなかった。

 世界的に株価の高騰が進み、資源価格も底固さが目立つ。今後は減産圧力が本格化するが、日本の生ゴム指定倉庫在庫は前年同期の半分程度しか存在せず、需給要因からは値上がりし易い環境にある。しかし、JPXゴム相場のサヤはまちまちであり、短期供給不安を織り込むような動きはみられない。上海ゴム相場がボックス相場を上下どちらの方向にブレイクするのかが注目されている。

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