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震災から10年―ゴム・樹脂業界から見た防災、復興、被災地支援

ランクセス、震災直後から被災地支援を継続

ラバーインダストリー 2021-03-22

 東日本大震災から10年。震災直後から現在に至るまで、被災地支援を継続しているのがランクセスだ。

 ランクセスは震災直後、ドイツ本社の「被災地を支援したい」という要望のもと、被災地の緊急支援および復旧・復興支援のため、25万ユーロの寄付を決定。その支援先として、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンを選定した。

 セーブ・ザ・チルドレンは国連に公式に承認された、子どもたちのための民間の国際援助団体(NGO)で、子どもの権利を守り、子どもに直面する社会課題の根本解決を目指し活動を行っている。支援先にセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンを選定した理由について、ランクセスの村上幸コーポレートコミュニケーションズ日本統括マネージャーは「セーブ・ザ・チルドレンは、震災によって非常に影響を受けやすい子どもの権利を守る団体として、子どもの支援を中心に活動していた。当社は2008年から未来の化学者を支援する教育支援活動をスタートしている。教育を支援するというランクセスのCSRの方向性と子どもの権利を守るというセーブ・ザ・チルドレンの方向性が合致した」と話す。

 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは被害の大きかった岩手県山田町、岩手県陸前高田市、宮城県石巻市の3地域で「子どもまちづくりクラブ」を立ち上げ、被災地の子どもたちが集い遊んだり、寛ぐ居場所として子ども広場を設置した。さらに岩手県山田町には、仮設子どもセンターを設置したが、ランクセスの寄付した義援金は、被災した子どもたちへの物資の支援だけでなく、こうした復旧・復興支援などに活用された。ランクセスは震災直後からセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの支援を継続している。長期にわたる支援について村上氏は「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンへの支援はCSR活動の一環として行っている。支援を継続する中で、復興の状況によって支援内容を変えていかなければならないということを学んだ。震災直後は不足する物資の提供が必要で、その後は子どもたちが活動する拠点も設置した。最近では、被災地においてもひとり親家庭の貧困率が高いという課題を踏まえ、子どもたちの新入学時の支援などを行っている。

 復興の状況によって支援の内容は変化してきているが、当社としても震災に付随する子供たちへの影響と社会課題を知るきっかけとなっている。子どもの課題に取り組んでいるセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンからの意見は非常に重要で、それを参考にしながら被災地への支援を続けている」と話す。

2014年からは夏休みに化学実験教室を開催

 2014年からはセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの協力のもと、夏休み中の教育プログラムを提供することを目的に、会社のプロジェクトとして有志メンバーを募り、被災地で化学実験教室を毎年開催している。化学実験教室開催は、夏休み中に子どもたちの遊びが少ないという被災地のニーズに対応したものだ。「一方的な押し付け、支援になってはいけないので、被災地と相談しながら毎年開催しているが、現地の子どもたちから開催してほしいという希望がある限り、継続していきたいという気持ちは大きい」(村上氏)。

化学実験教室の様子


 化学実験教室を開催することは、被災地に教育プログラムを提供するという機会になっているだけでなく、従業員への教育にとっても非常に良い効果をもたらしている。「化学実験教室のプロジェクトチームは、社内横断のチームのため、普段の業務では成立しないチームができる。社会課題に向き合う場としてだけでなく、社内交流の場であり、メンバー自らが自分の役割を見つけてこなすという自己実現や自己鍛錬の場にもなっていると思う」(同)。現地に行けないメンバーでも、「荷物を送ることを手伝う、実験に必要な器材等を取り寄せる、化学実験教室で着るTシャツをデザインするといった具合に、それぞれが無理のないように、できる範囲でプロジェクトに関わっている」(同)。被災地支援の一環として行っているプロジェクトだが、結果として社内の結束力も高まっている。

化学実験教室は2014年から毎年開催している


 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンと協力した支援だけでなく、2011年10月には震災からの復興を願い、福島県いわき市で演奏会を開催した日独ヤング・ユーロ・クラシック・アンサンブルの来日を支援、2013年7月には音楽を学ぶ東北の学生を対象に「小澤国際室内楽アカデミー奥志賀」の講習会を体験するプログラムを提供、2014年6月には岩手県山田町の小学校に化学実験キットを寄贈するなど、被災地に様々な角度から支援を実施してきた。

 被災地に寄り添った支援を継続してきたランクセスは、震災から10年を迎える今年も、その支援継続を決定している。

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