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連載「つたえること・つたわるもの」(99+1)

是非の初心・時々の初心・老後の初心――忘るべからず。

連載 2020-10-27

出版ジャーナリスト 原山建郎
 今回も「最強のエントリーシート対策講座」で配布した【〈志望動機〉+〈社会人力〉を伝えるワークシート】をもとに、【ライク(好きな仕事だから)・ライス(日々の糧を得るため)→ライフ(いのちが震え・感動するはたらき)ワーク】について考えてみよう。

 設問の順番は逆になるが、「2.プロとして働く〈社会人力〉を点検する」から見てみよう。これは社会人としてのコミュニケーション能力を診断するものだが、困ったことに未曾有のコロナ禍に見舞われた今年から数年間は、テレワーク(在宅勤務)主体の勤務体制を余儀なくされる。多くの企業がリモート面接をとり入れるだろうが、オンライン人物評価にはリスクをともなう。設問2の中身は次のようなものである。

2.プロとして働く〈社会人力〉を点検する
(1)きちんと自己管理できる人間か
 A あなたは、日ごろから自己責任で動く人間か?
 B あなたは、つねに役割意識を持ち、チームで動ける人間か?
 C あなたは、いつも約束を守り、周囲からあてにされる人間か?

(2)コミュニケーション能力のある人間か?
 A 正しい(適切な)日本語を用いて、楽しい会話ができる人間か?
 B 相手が話すことをきちんと聴くことができる人間か?
 C 苦手な相手でも、コミュニケーションできる能力があるか

 学生に「コミュニケーション能力」とは何かと質問すると、「誰とでも気軽に話せる(フランクな性格)能力」「その場の雰囲気を盛り上げる(ムードメーカー的)能力」などと答える。しかし、採用面接での受け答えで試されているのが、面接官との会話、つまり面接における「コミュニケーション能力」なのである。

 『就職ジャーナル』元編集長で、現在はFeelWorks代表の前川孝雄さんは、連載ブログ『前川孝雄の“はたらく論”』(2009年11月6日)に「面接は会話だよ、一つには〈聞くこと〉、二つめが〈話すこと〉」だと書いている。近年の学生は、自分の思いを面接でどのように「話す(アピールする)か」という意識が強すぎる。自分の強みを面接官に売り込もうと必死で、姿勢が前のめりになっている。他の学生よりひと言でも多く話すこと、面接官の興味を引くためのテクニックが、コミュニケーション能力だと思いこんでいる。しかし、採用面接はまず面接官の質問をよく「聞く(質問の意図を理解する)」こと。次に、自分より年齢が高い相手(面接官)にわかるように「話す(伝わるように→伝える)」ことだと、前川さんはいう。

 前川さんのアドバイスを要約すると、次のようになる。

(1)第一のポイントは、しっかり正確に「聞く」こと。 
 まず、面接官の質問をしっかり聞いて、質問の意図を正確に理解する。次に、あらかじめ準備してきた意見(考え方)やエピソード(体験)の引出しから、どれを用いて答えるべきかを頭のなかですばやく整理する。面接の評価基準のひとつに「質問をよく聞いて、理解してから答えているか」がある。面接官は、就活生の答えの中身だけでなく、質問を〈しっかり・正確に〉「聞く」姿勢、態度をチェックしているのだ。

(2)第二のポイントは、わかりやすく「話す」こと。 
 前川流の「わかりやすく」は「具体性と一貫性」であるが、これを原山流にいうと、具体性=固有名詞+数字情報、一貫性=話の筋道となるが、さらに「ひと言で」(コンパクトに)話す、を付け加えたい。

 「面接は会話だよ」を前川流に「ひと言で」いうと、「会話」は(1)相手の話(質問)を【聞く=理解する】→(2)相手がわかるように自分の思いを【話す=伝わるように→伝える】、この二つがそろって初めて成立する。また、「会話」はキャッチボールに似ている。相手のボールはからだの正面でキャッチし、返すボールはキャッチしやすいところに、とりやすいスピードで投げる――これがキャッチボールの基本だ。

 次に、「1.この会社を選んだ〈志望動機〉を点検する」は、企業の採用面接で〈志望動機〉を伝えるためのワークシートである。就活中の大学三年生にとっては近未来形の会社(就職先)だが、すでに実社会で働く私たちにとっては現在進行形(いま働いている)の会社(仕事)だ。このワークシートを見ながら、かつて採用試験を受けたときの〈志望動機〉は何だったか? もう一度、思い出してほしい。

1.この会社を選んだ〈志望動機〉を点検する
 (1)この会社のどこに魅力を感じたのか
 A この会社を選んだ「きっかけ」は?
 B この会社のどこに「魅力」を感じたのか?
 C なぜ、この会社で働きたいと思ったのか?

 (2)この会社で、ぜひ担当してみたい仕事(職種)は何か
 A この会社でぜひ担当したい仕事(総合職、専門職、一般職)は何か?
 B 担当したい職種のどこに「魅力」を感じたのか?
 C なぜ、その職種に就きたいと思ったのか?

 (3)なぜ他社ではなく、この会社で働きたいのか
 A 業界(企業)研究を通して考えたこと、学んだこと
 B 他社ではなく、ぜひこの会社で働きたいと考えた理由・根拠は何か?
 C なぜ、この会社で働きたいと思ったのか?

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