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連載「つたえること・つたわるもの」(90)

令和のニューノーマル=必要なものを・必要なときに・必要なだけ。

連載 2020-05-26

出版ジャーナリスト 原山建郎

 2008年初夏、武蔵野大学の非常勤講師だった私は、急逝された担当教授の代講で、英文科(現在の呼称はグローバルコミュニケーション学科)の学生を対象に「国際ビジネス論」「貿易実務論」を講じた。そのときの授業資料として、『週刊エコノミスト』(毎日新聞出版、2001年12月11日発行)に載っていた記事「戦後日本経済の10大ニュース」をとりあげた。これは当時の経済界トップ(60~80歳代)に尋ねた10大ニュースだが、それらの経済事象を参考にしながら、私の独断で「戦後」を4つの空気に分けてみた。

 ある年代には懐かしい19年前の10大ニュースだが、「戦後」を振り返りつつ、いま話題の「ニューノーマル」(※もとはリーマンショック後、世界経済がリーマンショックから立ち直っても、もとのバブル景気には戻れない状態がありふれた当然のもの〈新常態〉ととらえる考え方。今回の新型コロナウイルス感染拡大にともなう自粛要請の影響で、世界の経済活動が不自由になっている状態を、それが異常なことではなく、それを普通のレベルだととらえる考え方に援用されている)について、いくつかの視点で考えてみたい。

①「貧しい暮らしの中にも、幸福があった」時代(1945~1970年)
 ○敗戦ショック→財閥解体(独禁法)・朝鮮戦争と特需・ララ物資(米国からの食糧など支援物資)。/○「貧乏人は麦を食え」(所得倍増政策の池田勇人首相)発言、一億総「中流意識」。/○神武景気(1955~57年。三種の神器=電気冷蔵庫・電気洗濯機・テレビ)、岩戸景気(1958~61年)。/○1964年東京オリンピック(同年東海道新幹線開通)、1970年大阪万博開催。

②「お金(借金)で幸福が買えると錯覚した」時代(1971~1986年)
 ○第一次石油ショック=1973年第4次中東戦争、OPEC(石油輸出国機構)が減産・禁輸を行ない、原油価格が4倍に暴騰。スーパーではトイレットペーパー・洗剤・砂糖パニックが起きる。/○狂乱物価=1974年1~3月の経済成長率が戦後最大のマイナス成長(1974年1月の消費者物価は前年同期の20%アップ)、1974~1975年にかけて企業倒産が相次ぐ。/○第二次石油ショック=1979年イラン革命、原油価格が再び急騰。1980年イランイラク戦争勃発、両国の石油輸出がストップした。/○地価の高騰(日本列島改造論、故郷創生資金)、不動産担保に銀行融資が異常拡大。

③「バーチャルな幸福に酔い、はかない夢が醒めた」時代(1986~1998年)
 ○バブル景気と崩壊、高度経済成長(大量生産・大量消費・大量投棄)のつまずき。/○M&A(独禁法の形骸化)、不良債権、ゼロ金利(銀行救済)、デフレ・スパイラル、就職超氷河期、リストラ、ワークシェアリング。年俸制・成果主義(インセンティブ)。

④「必要なものを、必要なとき、必要なだけ」求める時代(1999年~)
 ○エコロジー、無農薬、有機栽培、エタノール燃料、エコマネー、ハイブリッド車。/○大量投棄・廃棄(無頭エビ・ダイコンの葉)→ゼロ・エミッション(棄てない)、大量消費(安価な化石燃料)→ゼロ・ウェイスト(浪費しない)。仏教的な「小欲知足」の智恵。/○「日本人の知恵」MOTTAINAIを世界共通語に(ケニアのワンガリ・マータイ女史)/○京都議定書1997年12月(温室効果ガス排出規制=日本6%、米国7%、EU8%)/○アウトソーシング(派遣社員・契約社員・アルバイト・パート社員)/○ブック・オン・デマンド(受注生産)、御用聞きビジネスの台頭。

 このうち①~③までは「戦後復興期」「経済成長期」「バブル経済期」の空気とほぼ重なるものだが、「戦後」経済の変遷の節目に垣間見えるのは、日本人の品格における「失われた60年」であり、さらに戦後日本の進路をリードし、いまも新植民地として日本を従属させている米国の大きな影である。そして、④は来るべき21世紀のパラダイムシフト(社会の規範や価値観が変わること)に求められる空気として、私なりの希望的観測を示したのだが、実際には②の「バブル経済よもう一度」に向かって、2013年6月、アベノミクス「三本の矢」(大胆な金融政策・機動的な財政政策・民間投資を喚起する成長戦略)が放たれたのである。

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