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連載「つたえること・つたわるもの」(84)

34年前、東大病院の「入院案内」が変わった。〈教育講演〉その2

連載 2020-02-25

 かつて、三度にわたる大手術などで、長い入院生活を過ごしていた遠藤さんは、病状が少し落ち着いたころ、週に一度の入浴を許可された。そのとき、担当医が「遠藤さん、あなたは〈もう〉週に一度、お風呂に入れるようになりましたよ」と声をかけてくれた。遠藤さんは、言外に≪週に一度、お風呂に入れるまでに回復した。よかったですね≫という明るさを感じた。これがもし、「あなたは〈まだ〉週に一度しか、お風呂に入ってはいけません」であったなら、≪今後の病状しだいでは、入浴許可を取り消す≫という言葉に聞こえたにちがいない。遠藤さんは、この心やさしい担当医のことを「言葉の魔術師」と呼んでいる。

 遠藤さんが「心あたたかな医療(病院)」の実現を願ってアドバイスした東大病院の改訂版「入院案内」は、その後、全国の病院で進められた「入院のご案内」改訂の〈心あたたかな病院〉モデルとなっている。

【プロフィール】
 原山 建郎(はらやま たつろう) 
 出版ジャーナリスト・武蔵野大学仏教文化研究所研究員・日本東方医学会学術委員

 1946年長野県生まれ。1968年早稲田大学第一商学部卒業後、㈱主婦の友社入社。『主婦の友』、『アイ』、『わたしの健康』等の雑誌記者としてキャリアを積み、1984~1990年まで『わたしの健康』(現在は『健康』)編集長。1996~1999年まで取締役(編集・制作担当)。2003年よりフリー・ジャーナリストとして、本格的な執筆・講演および出版プロデュース活動に入る。

 2016年3月まで、武蔵野大学文学部非常勤講師、文教大学情報学部非常勤講師。専門分野はコミュニケーション論、和語でとらえる仏教的身体論など。

 おもな著書に『からだのメッセージを聴く』(集英社文庫・2001年)、『「米百俵」の精神(こころ)』(主婦の友社・2001年)、『身心やわらか健康法』(光文社カッパブックス・2002年)、『最新・最強のサプリメント大事典』(昭文社・2004年)などがある。

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