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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、新型肺炎の警戒後退で堅調

連載 2020-02-24


マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=180円台後半まで値上がりする展開になった。新型コロナウイルスに対する警戒感が和らぐ中、安値修正の動きが継続した。2月4日の165.60円をボトムに安値修正の動きが続き、1月24日以来の高値を更新している。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万1,000元台中盤まで値上がりしている。春節(旧正月)前の1万2,250元は下回っているが、連日のように戻り高値を更新している。

 新型コロナウイルスの死者・感染者は増加傾向が続いており、先行きは予断を許さない状況が続いている。ただ、新規感染者数に関しては減少傾向が確認されており、ピークアウトに近づいている可能性が高いと評価されている。株式の他、原油や非鉄金属相場なども底固さを見せており、その流れの中でゴム相場も安値修正が進んでいる。

 実体経済の正常化には時間が必要であり、自動車生産・販売環境の混乱も残る可能性が高い。米アップルはサプライチェーンの混乱を理由に1~3月期の売上高ガイダンスの達成が困難との見方を示している。暫くは、中国製造業部門の混乱状況が続き易い。また、1月の中国新車販売台数は前年同月比18.0%減の194万1,000台であり、前年実績を19カ月連続で下回っている。昨年よりも春節が早かった季節要因の影響もあるが、2月の販売も低迷が続くとの警戒感は強い。

 ただマーケット目線では、既に新型コロナウイルスのピークアウト、それに伴う経済活動の正常化に焦点が当たっており、強含みの展開が続いている。

 一方、タイ中央ゴム市場の現物相場は、2月20日時点でUSSが前週比3.1%高の1キロ=42.40バーツ、RSSが同5.1%高の45.69バーツ。USS、RSSともに新型コロナウイルスの感染被害を織り込む前の値位置を上回っている。消費地相場と比較して、地合の強さが目立つ状況にある。

 産地では既にウインタリング(落葉期)が始まっており、集荷量が抑制され始めている。一方、乾燥状態が続いていることで土壌水分不足に懸念の声も強い。これまでは「需要不安」から産地相場も大きく値下りしていたが、ここにきて「供給不安」にマーケットの関心がシフトし始めている。今季はエルニーニョ現象やラニーニャ現象は発生していないが、昨年と同様に供給不安の織り込みが本格化すると、東京や上海ゴム相場も一段と地合を引き締め易くなる。

 新型コロナウイルスのリスク評価が中心の地合が続いているが、このままリスクオンの投資環境を維持できるのか、更に産地供給不安を織り込む動きがみられるかが焦点になる。

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