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連載「つたえること・つたわるもの」(83)

遠藤周作の遺言――『日本の「良医」に訴える』 〈教育講演〉その1

連載 2020-02-12

出版ジャーナリスト 原山建郎

 去る2月9日、東京・御茶ノ水で開催された第37回日本東方医学会で「遠藤周作の遺言――『日本の「良医」に訴える』――38年目を迎えた“心あたたかな医療”キャンペーン」と題する教育講演を行った。

 この学会は、医学部や歯学部で近代西洋医学を修めたのち、さらに東方医学(インド、チベット、中国、日本など、東方地域の伝統医学)の治療理論を学び、その知恵を患者の臨床に生かそうと努力する医師、歯科医師、鍼灸師、薬剤師、看護師など国家資格を持った医療職の会員で構成されている。3年前から、医師・鍼灸師・薬剤師が一人の患者の情報を共有しながら、連携して治療にあたる「医鍼薬地域連携研究会(第一段階は医鍼地域連携)」を立ち上げ、近代西洋医学と伝統的な東方医学の融合診療をめざしている。

 かつて出版社に在籍していた私は、1980年に異動した『わたしの健康』編集部で4年間、作家の遠藤周作さんと西洋医学や東洋医学の医師や治療家との対談シリーズ「治った人、治した人」を担当した。小説担当(番記者)ではないので、そのころから自分で「遠藤周作の“からだ”番記者」と名乗っていた。

 1982年春に始まった「心あたたかな医療」キャンペーンは、その2年前、遠藤家に手伝いにきていた若い女性が骨髄がんで大学病院に入院し、余命2カ月という診断にもかかわらず、がんの治療とは直接関係のない採血が毎日行われることへの疑問がきっかけである。担当医に「なぜ、命を終ろうとしている患者から、毎日採血をするのですか。これ以上、彼女を苦しめないでください」と遠藤さんが訴えたが、「ここは大学病院ですから(※今後の研究のために血液データをとらせていただきます)」という答えが返ってきた。

 よしんば、今後の治療に役立つ学問的データを集めるために、治療とは直接関係のない検査も必要であるという理由があったとしても、それが治療と関係のない苦痛を強いるのであれば……。遠藤さんはそのとき、多くの良心的な医師もこの矛盾にきっとぶつかっているに違いないと考えた。そして、1982年4月、遠藤さんは讀賣新聞夕刊に6回の連載エッセイ「患者からのささやかな願い」を、同年6月には『中央公論』7月号に「日本の“良医”に訴える――私がもらった二百通の手紙から」を寄稿したことから、この「心あたたかな医療」キャンペーンはスタートした。ことし令和2年は、遠藤さんが帰天された1996年9月29日から24年目、そして「心あたたかな医療」キャンペーンが始まってから38年目の春を迎える。

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