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【マーケットアナリティクス】

天然ゴム相場の11月後半のレビューと12月前半のアウトルック

連載 2016-11-30


マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努

11月後半のレビュー

 11月後半のTOCOM天然ゴム先物相場(期先)は1㎏=201.90円での取引開始後、ほぼ連日の急伸相場となり、230円台まで値位置を切り上げる展開になっている。高値は245.60円に達しており、昨年6月以来となる約1年5か月ぶりの高値水準での取引になっている。

 11月前半と同様に、上海ゴム相場の急伸地合が維持されていることが、東京ゴム相場も大きく押し上げている。中国当局は需給を反映しない投機活動が中国コモディティ市場全体で展開されているとして、11月入りしてからコモディティ市場での投機目的の資金提供禁止、取引所は取引手数料や証拠金の引き上げなどが、強引に相場の鎮静化を目指す動きを見せていた。実際に、こうした投機規制の動きを受けて鉄鉱石や石炭相場は一時的に急落する場面もみられたが、結果的にはコモディティ・バブルとも言える投機的な急騰地合に終止符を打つことに失敗しており、上海ゴム相場は連日の年初来高値更新となっている。

 円安によって円建てゴム相場に上昇圧力が強まりやすいことも支援材料となるが、専ら上海ゴム相場に連動した値動きになっている。上海ゴム相場は11月15日時点の1トン=1万5,605元に対して、月末には1万8,000元台まで値位置を切り上げ、2013年12月以来の高値を更新している。極めて過熱感が強い「棒上げ」状態にあるが、目立った調整局面もなく4週連続の急伸地合になっており、それがそのまま東京ゴム相場の急伸を促す構図になっている。

 産地では洪水被害がピークを脱しているが、増産期としては抑制された集荷量水準に留まっている。ただ、供給不安を背景とした値上り圧力は限定されており、産地相場も専ら上海ゴム相場に連動した値動きが続いている。産地需給環境は殆ど関心が払われない時間帯が続いている。

12月前半のアウトルック

 12月前半は、引き続き上海ゴム相場の動向が注目されることになる。11月以降の上海ゴム相場の急騰地合は当然に持続可能なものではなく、いずれかの時点で調整局面入りを迫られることになる。ただ、中国当局と取引所による投機規制の動きに逆行して急伸し、しかも上値切り上げサイクルに突入している相場のため、どこまで上昇すれば達成感が広がるのか、目標価格を設定するのは難しい状況にある。

 上海ゴム相場に先行して急騰した鉄鉱石の場合だと68%、石炭に至っては266%という異常な上昇率が、過去2か月間だけで記録されている。その意味では、同じ期間に40%前後の上昇率となっている上海ゴム相場は依然として割安と評価する余地さえあり、過熱感を巡る議論はどこがピークなのか判断が難しい状況にある。目先は現行の1万8,000元に対して、2万元の節目到達でどの程度の達成感が広がるのかを見極める展開になる。一方、仮にポジション調整が本格化すれば中期トレンドラインのある1万6,000元台、更には今回の急騰相場のスタートラインである1万4,000元水準までの急落地合が想定される。中国当局が第二、第三の投機規制導入に踏み切る可能性も想定しておく必要があろう。

 マクロ環境では11月30日の石油輸出国機構(OPEC)総会、12月4日のイタリア国民投票などが注目される。天然ゴム需給環境が殆ど材料視されていない以上、こうしたイベントをきっかけにリスクオフ化が進むか否かも焦点になろう。ただ、最近の急伸地合は他の資産価格動向と関係なく展開されており、余程の大きなショックが生じない限りは、ゴム相場動向に対する影響は限定され易い。

 上海ゴム相場の上昇がいつまで続くのかだけが問われる相場環境だが、専ら投機売買主体の取引環境にあるだけに、先行き不透明感が強い。今年に入ってから投機的な乱高下を繰り返している鉄鉱石相場の経験からは、投機売買が完全な鎮静化に向かえばこれまでの上昇分をほぼ相殺する急落地合に転換する可能性が高い。その際は、東京ゴムで200円の節目水準までの急落が見込まれる。一方で、現在の上昇地合が維持されれば2013年後半の250~300円水準までコアレンジが切り上がる可能性もある。なお高値更新サイクルが維持されている相場とあって上振れリスクへの警戒が基本になるが、上下どちらの方向に振れるにしても極めて大きな値幅となる可能性が高い不安定な相場環境が続くことになる。

【レンジ】
11月後半の取引レンジ 201.70~245.60円
12月前半の予想レンジ 200.00~280.00円

【プロフィール】
小菅 努(こすげ つとむ) マーケットエッジ株式会社 代表取締役

 1976年千葉県生まれ。筑波大学卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。コモディティ市場や金融市場の調査・研究・分析業務に従事。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)

http://www.marketedge.co.jp/
https://twitter.com/kosuge_tsutomu

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