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連載「つたえること・つたわるもの」(63)

『万葉集』巻五序(題詞)←『文選』巻十五(歸田賦)。漢字の言霊。

連載 2019-04-09

 万葉集を編んだ時代の日本人は、中国から朝鮮半島経由で伝わった中国語の漢字という種子(コード、記号)を、日本の土壌に蒔いて育てる「和魂漢才」という技(わざ)によって、漢字かな交じり文という日本語(モード、様式)に変換した。そして、現代の私たち、日本人はいまもなお、中国語である「漢文」を、高校時代の「漢文」の授業で習った「書き下し文」という日本語で読むことができる。

 紀元前十四~十一世紀ごろに栄えた中国・殷王朝時代に創られた甲骨文字にルーツを持つ漢字(漢民族の文字)は、現代中国では1950年に制定された簡体字(簡略字体)の使用によって、漢字本来の成立ち(会意・象形・形声・指示文字)がわからなくなりつつある。かつて漢字を日本に伝えた(元漢字文化圏の)朝鮮半島でも、十五世紀半ばに創られたハングル(朝鮮語を表記するための表音文字)を用いて、現在では漢字を一切用いず、漢字の発音で表す、カムサ=感謝、アンニョン=安寧など、全てハングル表記である。したがって、ハングル表記の「漢字熟語」では、大意はわかるが、本来の字義をたどることは難しい。

 令(レイ)を「よい・みことのり」、和(ワ)を「やはらぐ・なごむ」、音読(漢語読み)も訓読(和語読み)もできる日本語だからこそ、新元号の「令和」という漢字の言魂を味わうことができるのだろう。

【プロフィール】
 原山 建郎(はらやま たつろう) 
 出版ジャーナリスト・武蔵野大学仏教文化研究所研究員・日本東方医学会学術委員

 1946年長野県生まれ。1968年早稲田大学第一商学部卒業後、㈱主婦の友社入社。『主婦の友』、『アイ』、『わたしの健康』等の雑誌記者としてキャリアを積み、1984~1990年まで『わたしの健康』(現在は『健康』)編集長。1996~1999年まで取締役(編集・制作担当)。2003年よりフリー・ジャーナリストとして、本格的な執筆・講演および出版プロデュース活動に入る。

 2016年3月まで、武蔵野大学文学部非常勤講師、文教大学情報学部非常勤講師。専門分野はコミュニケーション論、和語でとらえる仏教的身体論など。

 おもな著書に『からだのメッセージを聴く』(集英社文庫・2001年)、『「米百俵」の精神(こころ)』(主婦の友社・2001年)、『身心やわらか健康法』(光文社カッパブックス・2002年)、『最新・最強のサプリメント大事典』(昭文社・2004年)などがある。

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