【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、上海主導でじり安の展開
連載 2019-03-25
マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努
TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=190円台前半まで軟化する一方、TSRが170円水準でほぼ横這いの展開になった。
売買判断を下す材料が乏しく薄商いの様子見ムードが強い相場環境が続いている。ただ、上海ゴム相場の上値の重さを眺めて、東京ゴム相場は調整売り優勢の展開になった。RSSは3月4日の209.50円をピークとした値下り傾向が続いており、2月22日以来の安値を更新している。
上海ゴム相場は1トン=1万2,000元の節目を完全に下抜き、1万1,000元台後半まで値下がりしている。中国実体経済の弱さがクローズアップされる中、高値を維持できずに水準を切り下げている。14日に発表された1-2月の中国鉱工業生産が17年ぶりの低い伸び率に留まったことを受けて、資源価格全体に上値の重さが目立つ状況が続いている。
しかし、上海株価は逆に年初来高値更新を窺う展開になっており、中国市場が発する強弱シグナルに挟まれて、東京ゴム相場は下げきれなかった。「実体経済の減速懸念」と「リスクオンの投資環境」に挟まれる中、調整売り圧力が優勢ながらも、一気に190円割れを打診するような明確なダウントレンドは形成できなかった。
東南アジアの産地に目を向けると、タイは本格的な乾季に突入しており、中央ゴム市場の集荷量は落ち込んでいる。現物相場も3月20日時点でRSSが前週比2.5%高の1キロ=49.37バーツ、RSSが同3.0%高の53.25バーツになっており、連日のように年初来高値を更新している。
しかしインドネシアやマレーシアでは逆に降雨過多さえ警戒される状況にあり、良好な土壌水分環境を背景とした安定した集荷環境が、逆に現物相場の上値を圧迫している。
すなわち、産地でも地域ごとの気象環境が大きく異なるため、タイ産価格は明確な上昇トレンドを形成しているものの、東京や上海ゴム相場を産地主導で押し上げるまでのエネルギーはなかった。
4月からはタイ、インドネシア、マレーシアの輸出規制が開始される予定だが、政策調整による需給引き締め効果を本格的に織り込むような動きもみられず、決め手難の相場環境が維持されている。
ゴム相場は強弱材料が交錯する中で、現状分析さえも難しい不安定な相場展開が続いており、売買見送りムードが目立つ。ドル/円相場も狭いレンジ内での横這い状態に留まった。
前週に続いてトレンド形成を促すような材料の浮上がみられるか否かが注目され、それまでは投機色の強い上海ゴム相場の動向を眺めながらの展開になる。
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