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連載「つたえること・つたわるもの」(39)

原爆死没者慰霊碑、国連憲章前文、二つのwe(われわれ/われら)。

連載 2018-04-24

 「55年体制」といえば、1955(昭和30)年の保守合同(自由党+民主党)、野党再統一(右派+左派社会党)の政治体制を指す言葉だが、その後の政権は、何度も保革交代を繰り返している。

 しかし1945年、we(われら)によって設立された国連(United Nations)は、73年後のいまも、恒久的に拒否権を約束された常任理事国(戦勝国)による「45年体制」が堅持されている。とりわけ、国連主導で進められている核兵器不拡散条約は、米・露・英・仏・中の五カ国(=常任理事国)を「核兵器国」として認定した上で、「核兵器国」以外への核兵器の拡散を防止(禁止)するという内容である。すでに未加盟国のインド、パキスタン、イスラエル、中途脱退の北朝鮮が核兵器を保有しているが、現在は北朝鮮の非核化、経済制裁のみが問題にされている。

 2009年のプラハ演説で「核廃絶」を訴えたバラク・オバマ大統領はノーベル平和賞を受賞したが、実際に彼がやったのは「700発の核兵器」から核弾頭を外しただけである。たとえは悪いが、拳銃の弾倉から銃弾を抜いて、ホルダーケースに移したに過ぎない。必要とあらば、いつでも銃弾を再装填して撃つことができる。現在、アメリカの核ミサイル推定保有数は6,800発(ロシアは7,000発、北朝鮮は10発?)もあり、米露二国で世界シェアの92%を占有している。

 和紙に書かれた「過ちの繰り返し(戦争の手段としての原爆の投下)を、我々は終わらせなければならない」という、被爆者の願いを「伝える」ためには、北朝鮮への核攻撃も辞さないとすごむ、トランプ大統領のアメリカなど核兵器国のwe(われら=連合国)に「伝わる」言葉で、ともに行動するwe(われわれ=人類)の一員に加わってもらう必要がある。ただし、we(われら)に「聞く耳」があれば、の話だが……

 「アメリカ・ファースト」の権化、ドナルド・トランプ大統領に『悪魔の辞典』の箴言を捧げよう。

人道主義者(humanitarian) 救世主は人間であった、そして当の自分は神である、と信じている者。
人間(human) 自分の心に描く自分の姿に、恍惚として眺め入っているために、当然あるべき自分の姿が目に入らない生き物。

【プロフィール】
 原山 建郎(はらやま たつろう) 
 出版ジャーナリスト・武蔵野大学仏教文化研究所研究員・日本東方医学会学術委員

 1946年長野県生まれ。1968年早稲田大学第一商学部卒業後、㈱主婦の友社入社。『主婦の友』、『アイ』、『わたしの健康』等の雑誌記者としてキャリアを積み、1984~1990年まで『わたしの健康』(現在は『健康』)編集長。1996~1999年まで取締役(編集・制作担当)。2003年よりフリー・ジャーナリストとして、本格的な執筆・講演および出版プロデュース活動に入る。

 2016年3月まで、武蔵野大学文学部非常勤講師、文教大学情報学部非常勤講師。専門分野はコミュニケーション論、和語でとらえる仏教的身体論など。

 おもな著書に『からだのメッセージを聴く』(集英社文庫・2001年)、『「米百俵」の精神(こころ)』(主婦の友社・2001年)、『身心やわらか健康法』(光文社カッパブックス・2002年)、『最新・最強のサプリメント大事典』(昭文社・2004年)などがある。

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