【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、貿易戦争のリスクで急落
連載 2018-04-02
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1キロ=180円水準まで急落する展開になった。3月26日安値は173.30円に達し、2016年10月以来の安値を更新している。
米国が中国の知的財産権侵害に対して、中国製品の輸入に税金を課す方針を発表したことを受けて、米中貿易戦争に対する警戒感がゴム相場も押し下げた。中国は報復措置を講じる可能性も強く示唆しており、米中のみならず世界経済にも大きな影響が生じるのではないかとの警戒感が、ゴムに限らず鉄鉱石や石炭、銅などの幅広い産業用素材の急落を促した。ただ、その後は米中当局者が交渉を行っているとの報道が流れたことで、貿易戦争に対する懸念が後退し、180円台前半まで切り返すなど荒れた相場展開になっている。
上海ゴム相場は、1トン=1万2,000元台後半での保ち合いを経て1万2,000元台中盤まで軟化していたが、米中貿易戦争の懸念が浮上すると急落し、1万2,000元、1万1,000元と次々と節目となる価格を割り込んだ。1万1,000元割れで下げ一服となったが、その後は特に戻りを試すような動きはみられず、16年8月以来の安値圏での取引になっている。
米中間の通商関係が悪化していることは間違いないが、これがゴムの需要環境にどのような影響を与えるのかは、評価を下すために必要な判断材料が乏しく、さらに値崩れを起こす展開は回避されながらも、反発は見送られる中途半端な値動きになっている。これは他の産業用素材市況についても言えることだが、ゴム相場の値動きは極度に不安定化している。
その一方で、産地相場は大きな値崩れを回避している。例えばタイ中央ゴム市場のRSS現物相場は、3月22日の1キロ=49.00バーツに対して29日は48.37バーツであり、東京や上海市場のような急落地合は回避されている。
産地ではインドネシアとマレーシアでは一定の降水量を確保しているが、タイ、ベトナム、カンボジア、ラオスなどでは引き続き乾季型の気象環境になっている。タイの集荷量も抑制されており、4-5月に向けてはさらに集荷量が落ち込む可能性が高い。
タイ、インドネシア、マレーシアの輸出制限策は3月末で終了するが、5-7月にかけて再び政策調整を行う方向性で調整が進んでおり、産地相場は上海や東京ゴム相場につれ安することを拒否している。このため、消費地相場と産地相場との乖離が一段と大きくなっているが、産地主導で安値是正を進めるような動きは見られなかった。需給環境よりも、米中貿易戦争のリスクをどこまで織り込むのかが問われるマーケットになっている。
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