コロナ禍から大きく飛躍する年に
年頭所感/日本ゴム工業会 清水隆史会長
工業用品 2023-01-11
2022年は、新型コロナウイルスの感染に関して、重症化率の低下、ワクチン接種の進展などから、ウィズコロナ、さらにはアフターコロナへの移行も見え始めました。
一方で、世界経済は2021年には急激な回復を見せていましたが、2022年はそれに伴う様々な混乱も続きました。そこへ2月にロシアのウクライナ侵攻という地政学上の問題が発生し、世界はさらなる資源や資材、食料の高騰や不足に見舞われています。
こうした中でゴム産業は、まず最大の需要先である自動車の生産が、車載の半導体不足が長期化し減産に追い込まれ、特に自動車業界と関連が深い工業用品を中心に生産量は夏頃まで前年水準を下回りました。
また、2022年後半には、世界的なインフレやこれに伴う各国の利上げ、特に米国の利上げにより急激な円安が進み、資源、原材料の価格をさらに押し上げる結果となっています。売り上げに対して原材料費の占める割合が大きいゴム製品製造業にとっては大きなダメージであり、一部には原材料の安定供給そのものに対する問題も生じています。
こうしてみますと、2022年はコロナ禍の緩和とは裏腹に「ものづくり」の企業にとっては困難な一年だったのではないでしょうか。
しかし、日本全体では第4四半期に入り、内需主導型で緩やかに回復に向かうとの見方もあり、また半導体に代表される部品の供給制約も緩和して、自動車の挽回生産にも期待できるようになってきました。不透明感はあるものの、この動きが安定することを願っています。
さて、経済がどのような状況であっても、当会はゴム製品製造業の全国、全製品の団体として、会員、ゴム産業、ひいては社会に役に立つ活動を止めるわけにはいきません。
まず環境問題についてですが、当会では2022年1月に2050年のカーボンニュートラルに向けた長期ビジョンを策定し、そのマイルストーンとなるよう2030年度目標も見直しを行い、すでにフォローアップ調査を始めています。2021年のフォローアップ調査では、調査参加会社各社が種々の取り組みを進めたことで、生産量の2020年比での増加に対して、CO2排出量の増加を大幅に抑制することができました。まずは、目標に向け順調な滑り出しといえます。
また、当会は厚生労働省から外国人技能実習制度における「ゴム製品製造職種」の試験実施機関として認定され、2021年12月から技能実習評価試験をスタートしています。2022年10月に新型コロナウイルス感染症に関する水際措置が緩和され、受検者数が急増しているところです。2023年は、受検者数の動向を見据えながら、制度運営を軌道に乗せ、本格化していく年になります。
さらに、国内外を含めたゴム製品等に関する標準化については、TC45国内審議委員会を中心として日本の優れたゴム製品、技術の優位性を確保する活動を継続しており、これはゴム製品製造業だけでなく、広くゴム産業に係る皆さまにも有益な活動だと自負しています。2024年は国際会議が日本で開催される見込みであり、その準備活動を本格化させます。
このように2023年は当会にとって重要事項が本格化し始める年と言えるかもしれません。2023年は経済的には不透明感漂うスタートです。しかし、ゴムは自動車の部品以外にも建築物、産業用・工作用機械、橋梁、港湾設備など広くインフラ維持に欠かせない素材であり、一方で家電製品や履物、スポーツ用品、衛生用品など身近な製品でも利用されています。従ってゴム製品製造業は多くの産業でサプライチェーンの一翼を担っており、ゴム製品は社会生活を営む上で欠かすことができない製品であることに変わりありません。
また、今後、ゴム原材料の分子レベルでの分析・研究がさらに進み、あるいはタイヤのセンシング技術やビッグデータの収集などによって、さまざまな特性を見つけ出し、詳細な設計ができるようになれば、新たなビジネスに繋がったり、需要先が開けたりする可能性も大いにあるでしょう。
そして、2023年は卯年。飛躍の年です。コロナ禍で縮めた身を、大きく飛躍させていきましょう。
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