【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、GW前後で大きな動きなし
連載 2020-05-11
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=150円水準で揉み合う展開が続いている。東京市場はゴールデンウィーク(GW)の連休を迎えたが、その前後で特に目立った値動きはみられなかった。
上海ゴム先物相場は、5月入りしてから上昇傾向を強め、1トン=1万元台中盤まで値上がりしている。中心限月ベースでは3月16日以来の高値を更新している。
新型コロナウイルスのインパクトが最大の焦点になる地合が続いているが、世界的には経済活動の正常化が模索されるステージに移行している。新規感染者数が減少に転じる中、米欧は政策の軸足を「感染対策」から「経済対策」にシフトし始めている。米国ではトランプ大統領が日常への回帰を強く要請しており、欧州ではドイツが新型コロナ対策の規制解消を進めている。
これによって直ちにタイヤの需要環境が劇的に改善する訳ではないが、少なくとも自動車生産の稼働が再開され始め、自動車による外出も増え始める中、需要環境は最悪期を脱したとの評価が優勢になっている。
今後はどの程度のペースで経済活動が正常化するのか先行き不透明感は強いが、原油や銅など他の産業用素材市場でも今後の需要環境の改善を先取りする動きが強く、ゴム相場もこうした流れから底固い展開が続いている。
ただ、新型コロナウイルスが他国に先行して収束している中国市場の動向をみると、直ちにタイヤ需要が劇的に改善している訳ではなく、需要環境の回復ペースは極めて緩やかなものに留まっている。景気減速によって消費者の雇用や所得にも大きなダメージが発生していることに加えて、感染リスクが完全に解消された訳ではなく、ゴム相場も4月2日の138.30円で底入れした可能性が高いものの、150円水準では上値追いに慎重姿勢が認められる中途半端な地合が続いている。
産地では乾季型の減産圧力が続いており、集荷量は低迷している。5月入りしたことで、今後は徐々に集荷量が増える見通しだが、産地相場は安定している。タイ中央ゴム市場の現物相場は、5月7日時点でUSSが前週比0.7%高の1キロ=37.31バーツ、RSSが同0.6%高の39.80バーツとなっている。東京市場の連休中に目立った動きはみられず、安値低迷状態が続いている。
現時点では特段の異常気象は予想されておらず、平年並みのペースで集荷環境は改善傾向に向かう見通し。ただ、マーケットでは需要環境の動向の方がより重視される傾向にあり、ゴム相場の一段高の有無は、今後のタイヤ需要環境の改善傾向に強く依存する。
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