タイヤの性能低下抑制や省資源化技術の開発に繋げる
住友ゴム工業、タイヤ用ゴム内部の特定材料を選択的に観測する手法
タイヤ 2020-05-11
住友ゴム工業が2020年代の実現を目指す、タイヤの技術開発コンセプト「SMART TYRE CONCEPT」。同コンセプトを支える主要技術の1つが、タイヤの性能低下を様々な面から抑制する「性能持続技術」だ。その技術を確立する上で欠かすことができないのが、今年1月23日に発表した「タイヤ用ゴム内部の特定材料を選択的に観測する手法」。材料開発の進展にとって、大きな鍵を握る。

増井友美住友ゴム工業研究開発本部分析センター主査
「タイヤ用ゴム内部の特定材料を選択的に観測する手法」は、茨城大学との共同研究により確立した。同技術の確立には、大強度陽子加速器施設(J-PARC)と茨城大学が新たに開発した装置を活用した。
同手法は動的核スピン偏極中性子小角散乱法(DNP-SANS)と呼ばれる方法で、タイヤに使われるゴム内の特定材料を選択的に観測できる。
タイヤに使われるゴムは天然ゴム、合成ゴムといったポリマーのほか、カーボンブラック、シリカといった補強材、ゴム薬品など、数十種類の材料で成り立っている。それらの分散状態や階層構造とタイヤ性能との間には相関関係があるとされ、分散状態や階層構造を明らかにすることは、材料開発にとって大きな進展に繋がる。
これまでの中性子解析技術でゴム中の特定材料の情報を得るためには、ゴムを構成するポリマー中の水素を重水素に置き換えた重水素化ポリマーを用いる必要があった。ただ、重水素化ポリマーは高価で大量に合成することが困難なため、実際のタイヤ用ゴムに応用することが困難だった。
中性子、ゴム中の水素が持つ磁石性質を活用
今回開発した手法は、中性子とゴム中の水素が磁石の性質(スピン)を持っていることを活用した。磁石の性質を活用するために必要となるのが偏極と呼ばれる技術。ゴムを装置の中に設置し、7テスラ(7万ガウス)という強力な磁場を与え、マイナス272度の極低温下でマイクロ波(電磁波)を照射することで偏極させる。茨城大学の小泉教授のグループが技術を確立した。ただ、ゴムの内部を調べるには、それ以外に磁石の性質を増強する偏極剤を効率よく均一にゴムに浸透させなければならない。その技術を住友ゴム工業の増井友美研究開発本部分析センター主査が開発し、これら2つの技術を融合することで、「タイヤ用ゴム内部の特定材料を選択的に観測する手法」が完成した。
偏極剤は加硫後の実際のタイヤ用ゴムにも後入れすることができ、既存製品の評価が可能だ。例えば1年使用時、2年使用時といった具合に、使用後のゴムを観察でき、ゴムの経年変化を追うことができる。その変化を観測することで、経年劣化や破壊の起因がどこにあるのかなどを把握でき、得られた知見を生かしタイヤの性能低下抑制や省資源化技術の開発に繋げていくことができる。
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