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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、投機主導の上海ゴム相場

連載 2017-08-28


 マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1キロ=210円台を中心とした小動きに終始している。お盆休みと前後して調整売りが膨らみ、一時は206.50円まで軟化する場面もみられた。しかし、上海ゴム相場の堅調地合が維持される中、8月17日高値は220.30円に達しており、低ボラティリティ環境ながらも5月26日以来の高値を更新している。

 引き続き注目されているのは上海ゴム相場の動向のみであり、東京ゴム相場は上海ゴム相場の「写真相場」と化している。足元ではその上海ゴム相場が動意を欠いていることが東京ゴム相場の膠着化を促しているが、中国コモディティ市場では引き続き鉄鉱石、鉄筋、石炭、銅などの幅広い産業用素材に投機マネーの流入が確認されており、この流れが維持される限りは、上海ゴム相場にも上振れリスクが残されることになる。

 政策によって短期需給が歪んだ鉄鉱石と鉄筋、北朝鮮からの輸入が停止された鉄鉱石と石炭などとは異なり、天然ゴムに関しては需給環境に何か相場を押し上げるような明確な材料が存在する訳ではない。ただ、中国人投資家が他コモディティと上海ゴムとで共通した投資スタンスを採用している以上、鉄鉱石や石炭相場などの上昇が息切れするまで、上海ゴム相場は上昇リスクを抱えることになる。

 人民元相場の年初来高値更新が続く中で、人民元建てコモディティ価格の急騰が続いていることに対しては違和感も強い。現在と同じ人民元相場のレートだった昨年9月当時の上海ゴム相場は、1万2,000元台で取引されており、現在よりも4,000元程度安値の状態にあった。しかし、為替レートも特に材料視されていない。

 中国コモディティ市場全体に投機マネーの流入傾向が維持されている限りは、「投機相場」との警戒感を有しつつも、更に上値を切り上げるリスクを想定するのが基本になる。

 産地供給環境は安定している。東南アジア地区では適度の降雨が観測されており、農産物生産全体に適した気象環境が維持されている。一部で突発的な洪水被害なども報告されているが、良好な供給環境が維持される中、供給サイドのリスクプレミアム加算の必要性は見い出せない。

 産地相場も専ら上海ゴム相場と連動した値動きが続いており、産地需給環境はほとんど材料視されていない。需給動向と関係のない価格形成が行われているだけに、瞬間的な急伸・急落リスクを抱えることになるが、引き続き中国コモディティ市場全体の資金動向に注目したい。中国人投資家の資金引き揚げまでは、需給と関係なく値上がりする可能性を残す。

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