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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、調整売りで1カ月ぶり安値

連載 2025-09-22

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 OSE天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=310円台を割り込み、8月7日以来の安値を更新する展開になった。9月上旬には一時324.90円まで値上がりしていたが、買いが続かず戻り売りが優勢になっている。特に目立った売り材料は見当たらなかったが、上海ゴム相場の上値の重さが嫌気され、戻り売り優勢の展開となった。

 上海ゴム先物相場は1トン=1万6,000元台を維持できずに、1万5,000元台中盤まで値下がりしている。鉄鉱石や銅相場などの底固さを背景に投機買いが膨らむも、1万6,000元台から一段高を試すような動きは見送られ、上値の重さを確認したとの見方が調整売りを招いている。ただし、最近の取引レンジ内での値動きにとどまっている。

 中国政府は、2025年の新車販売台数の目標を前年比約3%増の3,230万台前後とした。業界団体の中国汽車工業協会は同約5%増の3,290万台前後を見込んでいるため、事実上、目標引き下げと受け止められている。中国政府は買い替え奨励策の導入などで需要を刺激しているが、工業情報化省は「有効需要が不足している」、「理性的ではない競争が目立っている」として、自動車市場の改革を進める必要性を訴えている。

 これまでは、自動車メーカーが過剰な値下げで需要を喚起してきたが、健全な競争環境への移行が促されており、電気自動車(EV)を含めて従来想定されていたよりも厳しい市場環境が想定されていることはネガティブ。中国政府は、農村部での新エネルギー車の販売促進、充電施設の整備補助、車両購入税の減免措置など、需要刺激策を展開する方針を打ち出しているが、先行き不透明感が強い。

 供給サイドでは、中国や東南アジアで豪雨報告が続いていることに注意が必要。ただし、現時点では大規模な洪水被害の発生は中国北部などが中心であり、天然ゴム生産に大きな混乱は報告されていない。OSEゴム先物相場も当限に対してリスクプレミアムを加算する動きは見送られている。このまま豪雨が続くと、主要生産地でも洪水、鉄砲水、地滑りなどが生産・流通障害を招く可能性もあるが、潜在的なリスク要因との評価に留まっている。

 9月16~17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.25%の利下げが決定された。また、米金融当局者からは年内にさらに0.50%の利下げを見込んでいることが確認された。米政策金利の低下で自動車ローン金利に引き下げ圧力が強まること、世界的な株高傾向が強くなっていることはポジティブ。一方、ドル安・円高圧力が強まりやすいことは円建てゴム相場に対してネガティブだ。ただし、ドル/円相場の値動きは鈍かった。

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