【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、安値圏で方向性打ち出せず
連載 2025-04-28
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=280~300円のレンジで揉み合う展開になった。引き続きトランプ米大統領の動向が注目を集めているが、マーケット全体が混乱状況に陥る中、ゴム相場は明確な方向性を打ち出せなかった。
上海ゴム先物相場は1トン=1万4,000元台中盤で揉み合う展開になった。米中通商環境については悲観と楽観が交錯しており、明確な方向性を打ち出せなかった。
4月はトランプ大統領の動向にマーケット全体が一喜一憂している。トランプ大統領が何かを発言するたびに、その評価に揺れ動く混乱状況から抜け出せていない。国際通貨基金(IMF)は、2025年の世界経済成長見通しを1月時点の予測から0.5%引き下げ、2.8%とした。世界の貿易量の伸びが鈍化し、それに伴う供給ショックの発生が経済成長を下押しするとの見方が示されている。特に米国が0.9%下方修正の1.8%、中国が0.6%下方修正の4.0%、メキシコが1.7%下方修正のマイナス0.3%、日本が0.5%下方修正の0.6%など、主要自動車生産国の成長見通しが大きく引き下げられていることはネガティブ。
一方、トランプ政権が中国に対する関税率を大幅に引き下げることを検討していると複数のメディアが報じている。ベッセント米財務長官も、米中の関税の応酬は持続可能ではないとして、中国との協議が進めば数カ月以内に緊張緩和が実現できるとした。包括合意には今後2~3年が必要との慎重な見通しも示されているが、通商環境は最悪期を脱したとの楽観的な見方も浮上し始めている。
5月3日には自動車部品に対する25%の関税発動が予定されているが、何らかの緩和措置が導入される可能性も報じられるなど、情報が錯綜した状態が続いている。
ゴム相場は円高環境でも値崩れを回避するなど、一定の底固さをみせた。ただし、マーケット全体の地合が安定しない中で、ゴム相場のみを押し上げていくような勢いはなく、約2週間半にわたって280~300円水準での取引が続いている。国内市場はゴールデン・ウィークの大型連休を控えているが、上下双方に決定打を欠いた。
産地情勢はあまり材料視されていない。減産期から生産期への移行期になるが、産地主導の価格形成は行われていない。タイなどでは豪雨が報告されており、ゴム供給へのリスクと評価されているが、消費地相場にリスクプレミアムを加算するような動きはみられなかった。
ドル/円相場は139.86円まで円高・ドル安が進行したが、週後半は142円台まで切り返し、円高要因での断続的な値崩れは求められなかった。
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