【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、年初来安値更新、当限が急落
連載 2017-06-08
TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1キロ=200円の節目を割り込み、年初来安値を更新する展開になった。
5月中旬には、5月限納会を控えて期近限月が急伸したことが、期先限月もサポートした。5月限は一時323.00円を記録しており、サヤ修正の形で期中から期先限月も地合を引き締めた。しかし、5月25日の納会通過後は新たに当限となった6月限が急反落し、230円水準まで水準を切り下げている。受け渡し可能な荷が調達できたとの見方もあり、極めて速いペースで水準調整が促されている。僅か1週間で、当限の価格水準が100円近く切り下がった計算だ。
上海ゴム相場も年初来安値を更新している。5月下旬には1トン=1万4,000元台を回復する場面もみられたが、6月入りしてからは1万2,000元台中盤まで値下がりしている。
人民元基準値の算出方法見直しによって、当局の人民元管理が強化されるとの見方が、対ドルで人民元相場の急伸を促している影響が大きい。オフショア市場では、昨年10月中旬以来の人民元高が実現しており、為替要因が人民元建てゴム相場を押し下げている。
しかも、中国においては金融引き締めによる流動性供給難の状態にも変化がなく、天然ゴム需給とは関係なく上海ゴム相場に対しては下押し圧力が強まりやすい状況が続いている。中国では鉄鉱石や石炭相場なども年初来安値を更新しており、東京ゴム相場のみが大きく上昇するのが難しい状況に変化はみられない。
一方、生産地では北部を中心に降水量が増えており、乾季から雨季への移行は着実に進行している。それに伴いタイ中央ゴム市場の集荷量なども上振れしており、季節要因も供給サイドから需給緩和圧力として機能している。
RSS3号現物相場は5月17日の1キロ=73.51バーツをピークに、6月1日時点では66.68バーツまで下落している。急激な値下がりになっているが、特に売り渋りといった安値拒否の動きは確認できず、産地主導で安値是正を打診するような動きは限定されている。
5月限の納会を終えたことで、再び上海ゴム相場の動向が注目される局面になっている。当然に急ピッチな下げ相場が続いている反動には注意が要求されるが、目先は中国の流動性環境が大きく改善する可能性は低く、上海ゴム相場は更に水準を切り下げる可能性を残す。東京ゴムも200円の節目割れでチャート環境が悪化しており、投機売りが膨らみやすい環境になっている。下げ止まりを打診するには、産地で安値拒否の動きを広げるなど、相場テーマの転換が求められよう。
(マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努)
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