【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、通商リスクの値下がり続く
連載 2025-03-10
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=350円台前半まで下落し、2024年11月19日以来の安値を更新した。トランプ米政権の通商政策に対する警戒感を織り込む展開が続いている。原油相場の急落、為替が円高気味に推移していることもネガティブ。減産期入りしているが、主に需要サイドの要因で値下がりが続いた。
上海ゴム先物相場は、1トン=1万7,000元台中盤まで下落し、2月10日以来の安値を更新した。
トランプ政権は3月4日、カナダとメキシコからの輸入品に対して25%の関税を課した。また、中国からの輸入品に対しては、2月の10%に加えてさらに10%が上乗せされている。カナダは直ちに報復関税を発表し、中国も米国産農産物の輸入に対して10~15%の関税を発表している。新たな関税措置をきっかけに、貿易紛争が勃発していることに対する警戒感は強い。通商環境に対する漠然とした不安心理に加えて、すでに実体の減速が始まっているとの見方もネガティブ。
トランプ政権は、カナダとメキシコからの自動車輸入の一部に対しては、関税適用を1カ月免除すると発表した。米自動車メーカーからの反発が強く、対応のための猶予期間が設定されたことはポジティブ。ただし、関税発動の基本方針に変わりはなく、4月以降にメキシコから米国に向けた自動車輸出には大きな混乱が生じる可能性が残されている。
中国に対する追加関税が予定通りに発動されたことに加えて、トランプ大統領は欧州連合(EU)に対する25%の関税発動にも意欲を示している。景気のみならず、自動車市場の混乱リスクが、ゴム相場の値下がりに直結している。
3月5日に中国で全国人民代表大会が開幕し、2025年の経済成長目標は2024年に続いて「5%前後」に設定された。強気の成長目標達成のため景気刺激策への期待感が高まっていることはポジティブだが、それ以上に通商問題に対する警戒感が強かった。
産地は減産シーズンが続いているが、産地相場主導の値上がりもみられなかった。タイ中央ゴム市場(ソンクラ)地区のRSS現物相場は、3月5日時点で前週比1.3%安の1キロ=71.57バーツ。消費地相場と比較すると相対的な底固さもみられ、今後はウインタリング(落葉期)の減産圧力が一段と強まる見通しにある。しかし、JPXゴム先物相場は期先に対して期近がディスカウントされる順サヤになっており、供給不安よりも需要不安の織り込みが優先されている。
引き続き為替市場で円高圧力が続いていること、原油相場の急落、株価の急落などもゴム相場の上値圧迫要因になった。
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