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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、上海が伸び悩み、上げ一服

連載 2024-10-14

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=400円の節目を挟んで売買が交錯する高止まりになった。10月8日高値は419.70円に達し、2011年4月以来の高値を更新した。産地天候不順が続いていること、為替が円安気味に推移したことなどを受けて、高値更新サイクルは維持された。しかし、国慶節の連休明け後の上海ゴム相場が利食い売り優勢の展開になったことで、390~410円水準をコアに上値の重さが目立った。

 上海ゴム先物相場は10月8日に国慶節の連休明けの取引を再開したが、9月30日の1トン=1万9,135元に対して、1万8,000元台中盤まで下落している。産地天候不順による供給不安に変化は見られないが、中国政府の景気刺激策に対する過度の期待感が剥落した結果、国慶節の連休明け後は中国株や非鉄金属、鉄鉱石相場などが上げ一服となっており、つれてゴム相場も調整売り優勢の展開になっている。

 中国国家発展改革委員会は10月8日に成長を促進するための政策パッケージについて記者会見を行ったが、通年の経済目標の達成に「十分な自信がある」とする一方、強力な財政措置を打ち出さなかったことで、マーケットには失望感が広がっている。

 すでに中国人民銀行(中央銀行)が金融緩和を実施しているが、連休明け後は財政政策についても具体策が発表されるとの期待感が強くなっていた。しかし、今回の会見では2025年予算の一部を前倒しで支出する方針を示すなど、小規模なものに留まっている。国慶節の連休前は期待感で買われ、連休後は失望感で売られる展開になっている。マーケットでは、1兆~3兆元(21.5兆~64.5兆円)規模の財政出動が期待されているが、より具体的な政策発表が待たれる中、調整売りが上値を抑えている。

 一方で大きく値を崩すのに至っていないのは、引き続き産地天候不順に対する警戒感が強い影響だ。中国南部から東南アジアでは、豪雨の報告が続いている。タイ気象庁の10月10~16日予報でも、大雨による洪水被害への注意喚起が行われている。このまま異常気象「ラニーニャ現象」が発生するリスクも警戒されている。

 タイ中央ゴム市場(ソンクラ地区)のRSS現物相場は入電なし。ただし、10月10日時点でUSSが前週比3.1%安、ラテックスが同0.6%安、カップランプが同2.6%安など、産地相場は全体として上値が重かった。消費地相場の軟化を受けて、産地相場も上げ一服となった。

 こうした産地市場の動きと連動して、JPXゴム相場も当限のプレミアムがやや縮小しているが、大幅な逆サヤ(期近高・期先安)傾向は維持されている。

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