【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、産地急伸も高値ボックスに
連載 2024-02-05
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=280円台で売買が交錯する展開になった。産地相場の急伸傾向が続く中、高値圏での取引が続いている。ただし、上海ゴム相場の軟化や円高が上値を圧迫し、1月25日高値289.50円をピークに上げ一服となり、明確な方向性を打ち出せていない。
上海ゴム先物相場は、1トン=1万3,000元台後半で上値を抑えられ、1万3,500元を割り込んでいる。産地相場は急伸地合が続いているものの、中国経済の減速懸念、中国国内の在庫積み増し圧力の強さが上値を圧迫している。
中国の1月製造業PMIは、前月の49.0から49.2まで若干改善している。ただし、活動の拡大・縮小の分岐点である50は4カ月連続で下回っており、中国経済の回復力の鈍さが再確認されたとネガティブな評価が優勢になっている。2月10日から春節(旧正月)の連休を控えているが、需要の弱さもあって1月段階から早めに工場の稼働率を引き下げるような動きが報告されている。中国政府の景気対策期待が強くなっていることはポジティブだが、上海株式相場が戻り売り優勢の展開になったこともあり、上海ゴム相場も売り優勢の展開になった。このまま景気減速懸念でさらに値位置を切り下げるのか、景気対策期待で下値を固めるのかが焦点になる。
上海期貨交易所の認証在庫は9週連続で増加。2023年末の18万9,951トンに対して1月26日時点では20万7,851トンまで増加している。潤沢な在庫環境も上海ゴム相場の上値を圧迫している。
一方、産地相場は年初からの急ピッチな上昇相場を続けている。タイ中央ゴム市場(ソンクラ)のRSS現物相場は、2月1日時点で前週比4.4%高の1キロ=73.39バーツとなっている。年初の57.30バーツから28.1%高になっている。
一部生産地で豪雨も報告されたが、集荷量には目立った落ち込みは発生していない。ウインタリング(落葉期)に突入しているが、供給環境に大きな変動はみられない。ただし、2月10~17日の春節を前に在庫手当の動きが強く、主に需要サイドの要因で産地相場は急伸している。サプライチェーンの安定性確保が最優先される時期とあって、急ピッチな値上がりが受け入れられている。ただし、春節入りした後も産地相場の急伸が続くのかは不透明感が強く、JPXゴム相場も産地相場の底固さに下値を支えられながらも、明確な方向性を打ち出すには至っていない。
為替が円高気味に推移したことはネガティブ。日本銀行のマイナス金利解除の時期が近づいているとの見方が強く、1ドル=149円水準で抵抗を受け、146円台中盤まで円高・ドル安が進行した。
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