【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、中国リスクと円高で軟調
連載 2023-12-11
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=240円水準まで急落し、10月12日以来の安値を更新した。為替相場が円高に振れていることに加えて、中国経済の減速懸念を織り込む動きが強まり、下落ペースが加速している。
上海ゴム先物相場は、1トン=1万3,000元台前半まで下落し、8月22日以来の安値を更新した。一時は1万3,000元を割り込んでいる。
中国経済リスクが改めてゴム相場の上値を圧迫している。12月5日に米格付会社ムーディーズは、中国の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。中期的な経済成長率の低下や、債務増加見通しが理由として指摘されている。
この格付け見通しの引き下げをきっかけに、中国市場では鉄鉱石や石炭、非鉄金属相場などが値下がりしており、その流れでゴム相場も上値の重い展開になった。
中国経済に関しては、政府の景気対策や金融緩和などの政策支援の影響で、最悪期を脱したとの見方が9~11月にかけてのゴム相場高を支援していた。実際に各種経済指標では中国経済が最悪期を脱したとの見方を支持するものが目立つ状況になっている。しかし、格付け見通しの引き下げをきっかけに、中国経済リスクの織り込みが再開される地合になっている。年末に向けてさらに中国経済リスクを織り込むような動きがみられるか否かが注目される。
また、引き続き円高傾向も円建てゴム相場に対してはネガティブになっている。ドル/円相場は12月7日の取引で1ドル=145円台に突入し、9月1日以来の円高・ドル安環境になっている。11月13日の151.92円をピークに6円を超える円高・ドル安圧力が発生していることが、円建てゴム相場の値下がりに直結している。12月12~13日には米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されるため、そこでさらに円高・ドル安が進むか否かが注目される地合になっている。
一方、産地供給環境は安定している。11月までは豪雨の影響で集荷環境が不安定化し、さらに12月はインドネシアやマレーシアの降水量が多めだが、東南アジア全体としては降水量が安定しつつある。タイ中央ゴム市場の集荷量も高水準になっており、供給環境もゴム相場の値下がりを支持。12月7日時点のRSS現物相場は、前週比2.6%安の1キロ=53.39バーツとなっている。12月入りしてからは産地相場も値下がり傾向が目立っている。
国内の低在庫環境には変化がみられないが、当限主導で上昇を再開するような動きはみられない。逆に当先の順サヤ(期近安・期先高)傾向が強まるなど、期近限月の上値の重さが目立つ展開になっている。
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