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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、円高で調整売り優勢の展開

連載 2023-11-27

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=260円台前半まで急落した。当限主導の上昇が一服する中、円高要因で戻りを売られる展開になった。国内在庫の低迷状態に変化はみられないが、11月24日の受渡日を前に当限の上昇が一服すると、もっぱら為替要因で値下がりしている。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万3,000元台後半まで値下りし、約2カ月ぶりの安値を更新。中国通貨人民元が対ドルで急伸したことで、こちらも為替要因から値下がりしている。日米ともに通貨高が自国通貨建てゴム相場を押し下げる展開になった。

 米国では利上げ終了観測が強まる中、米金利低下・ドル安傾向が強くなっている。こうした中、対ドルでは円高と人民元高が同時に進行している。日米の金融政策は依然として緩和的だが、米国が世界に先駆けてインフレ対応の利上げを終了させるとの見方が、高騰していたドルの急反落を促している。

 ドル/円相場の場合だと、11月13日の1ドル=151.92円をピークに、21日は147.14円までの円高・ドル安。最大で4.78円の円高・ドル安圧力が、円建てゴム相場の値下がりに直結した。

 人民元建ての上海ゴム相場も同様。対ドルでの人民元相場は7月27日以来の人民元高・ドル安になっている。中国当局が人民元相場の反発を容認する姿勢をみせている。

 このため、さらにドル安、そして円高と人民元高が続くか否かが注目される地合になっている。

 米国の利上げ終了観測を受けて、投資家のリスク選好性は高まっている。日経平均株価は今年最高値を更新している。また、原油相場は産油国が原油安への対応を行うとの観測から下げ一服となっている。26日に予定されていた石油輸出国機構(OPEC)プラスの会合が30日に延期されるなど先行き不透明感は強いが、ゴム相場を取り巻く外部環境は総じて強気だった。しかし、11月中旬から下旬にかけては為替相場の値動きがあまりに激しくなっており、もっぱら為替要因の方が重視される展開になった。

 こうした消費地相場の軟化を受けて、産地相場も軟調に推移した。タイ中央ゴム市場(ソンクラ)のRSS現物先物相場は、11月23日時点で前週比2.2%安の1キロ=54.07バーツとなった。産地では雨季から乾季への移行が進み始めており、豪雨や洪水被害は一服している。今後は減産期に向かうことになるが、季節要因の買い圧力よりも、短期供給リスク解消の売り圧力の方が優勢だった。

 JPX発表の生ゴム指定倉庫在庫は、11月10日時点で3,692トンであり、10月30日時点の3,948トンからさらに減少している。

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