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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、上げ一服後の高値ボックス

連載 2023-09-18

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=230円台前半から中盤で揉み合う展開になった。9月4日の239.00円で上げ一服となり、その後は高値更新が見送られている。ただし、逆に戻りを売り込むような動きもみられず、週を通じて高値ボックス化した。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万4,000元台前半で揉み合う展開になった。高値更新は一服しているが、売買が交錯しており明確な方向性を打ち出せていない。

 JPX天然ゴム相場は、8月16日の194.00円をボトムに239.00円まで最大45.00円の急伸地合を形成した。安値修正の動きが踏み上げ相場に発展した格好だが、落ち着きを取り戻しつつある。取組高も1万枚前後で減少傾向に歯止めが掛かり、大規模な持高調整の動きは一服したことが窺える。出来高も落ち着きをみせはじめており、踏み上げ相場は終了したとみていいだろう。

 8月下旬以降の急伸地合で、ゴム相場は他の産業用素材市況と価格水準が大きく異なる環境になっている。比較的ゴム相場と連動性が強い非鉄金属相場は一貫して安値低迷状態にある。このため、上げ一服後のバランス調整を行うのであれば急反落が求められる環境だったが、実際には明確なトレンド形成に至らなかった。短期筋の瞬間的な売買が繰り返されるだけの展開が続いている。

 中国の8月新車販売台数は前年同月比8.4%増の258万2,000台となった。電気自動車(EV)などの新エネルギー車の販売が前年同月を27%上回っている。中国国内メーカーに加えて、欧米メーカーも相次いでEVを中国市場に投入しており、活況を呈している。EV投入に出遅れた日系各社の販売台数はいずれもマイナスになっているが、中国市場の新車向けタイヤ需要環境は良好と言える。

 一方で中国経済の減速懸念も根強く、ゴム相場をさらに押し上げるような動きは見送られている。中国政府の景気対策期待がある一方、景気を十分に下支えすることは困難との見方も強い。マーケット全体で中国リスクの織り込みに一服感がみられるが、逆に先行きに楽観ムードが浮上している訳ではなく、決定打を欠いている。

 タイ中央ゴム市場(ソンクラ)の現物相場は、9月14日時点でUSSが前週比0.9%高の1キロ=48.25バーツ、RSSが同0.7%高の50.71バーツ。消費地相場が高値ボックス化するなか、産地相場の値動きも鈍化している。8月下旬以降の産地相場高は、もっぱら消費地相場の値動きと連動したものだったことが再確認できる。タイのゴム生産地では豪雨も報告されているが、特に供給リスクを織り込むような動きは確認できなかった。

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