【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、中国リスクで安値更新続く
連載 2023-08-21
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=190円台前半まで値下りする展開になった。8月16日安値は194.00円に達しており、2021年9月以来の安値を更新している。中国経済の減速懸念を織り込む動きが強化されていることが、ゴム相場の値下がりに直結している。為替市場では、円が今年最安値を更新しているが、円安を受けての買いよりも、中国経済リスクを受けての売りが優勢だった。
上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元台後半まで下落している。中国通貨人民元が対ドルで今年最安値を更新しているが、改めて景気減速を織り込む動きが優勢になっている。
中国の各種経済指標が景気減速懸念を高めている。8月の新規銀行融資は前月から89%減少した。家計部門に留まらず、企業部門でも資金需要が急激に落ち込んでいる。また、7月小売売上高は前年同月比2.5%増(前月は3.1%増)、7月鉱工業生産は同3.7%増(同4.4%増)、7月固定資産投資は同3.4%増(同3.8%増)となっている。いずれも市場予想を下回る減速であり、中国経済はマーケットの想定以上に厳しい状態にあるとの見方が支配的になっている。
その影響で非鉄金属に加えて原油相場なども上値を圧迫されており、上海ゴム相場は戻り売り優勢の展開。急激な人民元安の影響で年初来安値の更新を試すような地合にはなっていないが、上値の重さが再確認されている。
中国人民銀行(中央銀行)は、中期貸出制度(MLF)1年物の金利を0.15%引き下げて2.50%としているが、中国経済を下支えするには不十分との見方が支配的になっている。中国政府がさらに大規模な景気対策を打ち出す必要性が高まっている。
一方、産地相場は安値低迷が続いている。タイ中央ゴム市場(ソンクラ)では8月17日時点でUSSが前週比0.5%安の1キロ=43.06バーツ、RSSが同1.5%高の46.02バーツとなっている。生産コスト割れも警戒される水準に到達しているが、産地主導で安値修正を進めるには至っていない。
タイなどでは豪雨や洪水被害も報告されているが、産地相場を大きく押し上げるような供給障害は確認できていない。生産者がどこまでの安値を許容するのか、その限界ラインが打診されている。農家の売り渋りが本格化すると、安値限界が意識される可能性が高まる。
為替市場では、1ドル=146円台まで円安・ドル高が進行している。日本当局の円買い介入が警戒される水準に到達しているが、米金利上昇が続いているため、円安・ドル高が円建てゴム相場の下落圧力に対してブレーキを掛けている。
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