【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、中国経済リスクと産地安
連載 2023-06-26
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=200円台中盤まで下落し、約1カ月ぶりの安値を更新した。中国経済の減速懸念、産地相場の軟化を受けて、調整売り優勢の展開になっている。3月下旬から続くボックス相場内での値動きだが、上値の重さが目立った。
上海ゴム先物相場は、1トン=1万1,000元台前半でやや上値の重い展開になった。ただし、6月22日から端午節の連休で取引は3営業日しかなく、積極的な売買は見送られている。
中国人民銀行は6月20日、銀行が貸し出す際の目安となる事実上の政策金利「最優遇貸出金利(LPR)」の1年物を0.1%引き下げて3.55%とした。10カ月ぶりの引き下げであり、景況感の悪化を受けて、金融緩和で景気を下支えする姿勢を強化した格好になる。しかし、マーケットでは景気を下支えするには不十分との見方が強く、逆に中国景気リスクの織り込みがゴム相場の上値を圧迫した。
より大規模な景気対策を求める声も強いが、中国の今年の経済成長率目標「5%前後」については十分に達成可能な状態とみられ、政府が財政出動に踏み切る可能性は低いとの見方もネガティブ。
また、ブリンケン米国務長官が訪中したが、米中対立緩和の見通しが立たない状態もネガティブ材料視されている。地政学リスクの高さが、中国株と同様に上海ゴム相場の上値を圧迫した。
一方、産地相場の上値の重さも嫌気されている。タイ中央ゴム市場現物相場は、22日時点でUSSが前週比1.3%安の1キロ=46.60バーツ、RSSが同2.4%安の48.38バーツとなっている。RSSの集荷量が一段と増えていることが、産地相場の上値を圧迫している。減産期から生産期への移行が着実に進んでいる季節要因が産地相場を押し下げている。
異常気象「エルニーニョ現象」の発生で東南アジアの農産物市場は全体的に不安定化しているが、天然ゴムに関しては少なくとも短期供給トレンドは上向きになっており、産地主導の値下がり圧力が観測されている。このまま高水準の集荷量を背景に一段安を打診するのか、改めてエルニーニョ現象の供給リスクを織り込むのかが注目される。
為替相場が、1ドル=142円水準まで円安・ドル高に振れたことはポジティブ。日米金融政策環境の違いを手掛かりに、2022年11月以来の円安・ドル高環境になっていることが、円建てゴム相場の下値をサポートした。日本政府からは急激な円安をけん制する動きもみられはじめているが、介入が行われるのは時期尚早との見方から、円安傾向は維持された。月末に向けてさらに円安が進むかも注目されている。
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