【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、210円水準で膠着気味に
連載 2023-05-22
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=210円水準で揉み合う展開になった。中国経済の減速懸念が根強いが、上海ゴム相場は逆にやや底固く推移し、為替が円安に振れたこともあり、明確な方向性を打ち出せない展開になった。
上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元台前半をコアにやや底固く推移している。5月16日に発表された中国の4月経済指標が市場予想を下回ったことはネガティブ材料視された。鉱工業生産が前年同月比5.6%増(市場予想は10.9%増)、小売売上高が同18.4%増(同21.0%増)、固定資産投資が同4.7%増(同5.5%増)となっており、4~6月期の成長懸念を強めている。しかし、中国政府が本格的な景気刺激策を打ち出すとの観測もあり、上海ゴム相場の値崩れは回避された。結果的に強弱評価が割れており、上下双方に決定打を欠く展開になった。
5月は米地方銀行の経営不安、米債務上限問題などが投資家のリスク選好性を後退させていたが、徐々に落ち着きを取り戻しつつある。原油や非鉄金属相場の急落傾向は一服しており、コモディティ相場全体が安定を取り戻しつつある。積極的に上値を買い進むような動きまでは見られなかったが、パニック的な急落地合に歯止めが掛かっていることも、ゴム相場を下支えしている。
日経平均株価は3万円の大台に乗り、2021年9月以来の高値を更新している。ゴム需給に関する新規売買材料が乏しい中、世界的に株価が安定を見せていることも、ゴム相場にはポジティブだった。
一方、供給サイドの動向はあまり材料視されていない。タイ中央ゴム市場の集荷量は5月に入ってから明確に上振れ傾向を見せているが、まだ正常化したとは言い難い状態にある。今季は、東南アジア全体で厳しい熱波が報告されているが、逆に天候リスクを相場に加算していくような動きも見られなかった。現物相場も週を通じてほとんど動きが見られなかった。供給サイドより需要サイドの動向が重視される地合が続いた。
為替が円安・ドル高に振れていることは、JPXゴム相場の押し上げ要因になっている。リスク投資の地合が安定していること、米長短金利の上昇を受けて、2022年12月以来の円安環境になっている。新規売買材料が乏しい中、円安は円建てゴム相場の値上がりに直結する動きとして相対的に注目度が高かった。
JPXゴム先物相場は、5月18日時点で5月限の208.90円に対して10月限が212.00円となっており、3.10円の順サヤ(期近安・期先高)になっている。サヤがフラット状態に近づいていることは、当限主導の値崩れが一服したとの評価を高めている。
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