PAGE TOP

【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、銀行危機の上値圧迫が続く

連載 2023-03-27

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=200円台中盤まで下落し、2021年9月以来の安値を更新した。前週に続いて米欧銀行の信用不安が投資家のリスク選好性の低下を招き、他資産価格と同様にゴム相場を押し下げている。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万1,000元台中盤で揉み合う展開になった。急落地合は一服したが、安値修正を進めるような動きはみられず、低位安定化した。

 銀行の信用不安に関しては、このまま大手金融機関の連鎖破綻に発展すると、2008年のリーマン・ショック型の信用収縮に発展する可能性もあるだけに、ゴム市場に限らずマーケット全体で警戒感が強くなっている。UBSのクレディ・スイス買収、日米欧6中央銀行のドル供給強化といった対策も講じられているが、企業や個人の信用状況悪化の可能性は依然として高く、ゴム相場は不安定な値動きを迫られている。この問題は金融市場や実体経済にどの程度の影響を与えるのか予想が難しく、マーケットもいつ新たな金融機関の破綻が発生するのか疑心暗鬼の状態に陥っている。一部では取り付け騒ぎも引き続き報告されているため、高ボラティリティの相場環境を想定しておく必要がある。

 一方、各国で利上げの停止や終了の議論が活発化していることはポジティブ。米国も22日にフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%引き上げて4.75~5.00%としたが、年内の利上げは残り1回との見通しが示された。各国中央銀行が有事対応モードに変わっており、流動性環境への警戒感が緩和すると、下値をサポートする可能性が浮上している。

 供給サイドでは、減産期のピークに向かっており、集荷量は抑制されている。また、インドネシアやマレーシアでは、引き続き豪雨による農産物生産環境の悪化も警戒されている。ただ、タイ中央ゴム市場の現物相場は、3月23日時点でUSSが前週比4.6%安の1キロ=45.67バーツ、RSSが同0.3%安の49.08バーツと上値の重さが維持されている。例年だと4月に向けて減産期のピークを迎えるが、供給リスクよりも需要リスクの方が重視されており、消費地相場主導の反発は見送られている。低集荷環境における値下がり傾向が維持されている。

 ただ、当限が200円割れからの一段安に抵抗を見せたことで、当先の順サヤ(期近安・期先高)は縮小し、期近から期中ゾーンではサヤがフラット状態に近づいた。23日は3月限の199.70円に対して8月限は204.10円になっている。当限がこのまま安値抵抗を見せるのか、それとも期先主導の値下がりで逆サヤに転換するのかが焦点になる。

関連記事

人気連載

  • マーケット
  • ゴム業界の常識
  • 海から考えるカーボンニュートラル
  • つたえること・つたわるもの
  • ベルギー
  • 気になったので聞いてみた
  • とある市場の天然ゴム先物