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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、産地主導で上値追いの展開

連載 2023-01-30

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=230円台中盤まで値上がりする展開になった。中国は春節の連休を迎えたが、そのタイミングで産地相場が急伸したことが好感され、上値追いの展開になった。為替市場で円高圧力が一服したこともポジティブ。日本銀行の急激な緩和政策見直しのリスクが後退しており、ドル/円相場は方向性を欠いた。2022年10月11日以来の高値を更新した。

 タイ中央ゴム市場のRSS相場は、1月26日時点で前週比10.0%高の53.53バーツと急伸している。1月上旬は上海ゴム相場の上昇局面でも47バーツ台をコアに膠着気味の展開が続いていたが、上海ゴム市場の連休入りと前後して一気に値位置を切り上げる展開になった。

 目新しい買い材料が浮上した訳ではないが、JPXゴム相場は産地相場主導の上昇地合になった。中国経済の正常化による需要拡大期待が強くなっていること、ウインタリング(落葉期)に突入していることに伴う供給不安の影響などを指摘可能だが、いずれにしても産地相場が安値低迷状態から大きく切り返す動きを見せていることが、JPXゴム相場を押し上げている。

 一般的に中国の春節中は現物市場の売買も低調になりやすく、実際にタイ中央ゴム市場でも高水準にあった集荷量が落ち込みを見せている。このため横ばい気味の展開を続けることも十分に支持できる環境にあったが、実際には1週間に産地相場が1割の上昇率を記録している。これは上海ゴム市場の連休中の値動きだったため、連休明け後の上海ゴム相場が更に勢いづいて大きく上昇するのか、それとも産地相場主導の上昇を拒否するのかが焦点になる。

 コモディティ市場全体を見渡すと、春節の連休中も原油や非鉄金属相場などは底固く推移している。中国のゼロコロナ政策終了に対する高い評価が維持されている。ゴム相場の目線でも自動車や航空機を使った移動が活発化したことは、タイヤ用需要の拡大期待を強めることになる。

 春節中の人流が活発化した影響で新型コロナウイルスの感染被害が急速に広がるリスクに注意が必要だが、いずれにしても2023年の中国経済の成長加速期待が重視されると、上海ゴム主導の安値修正が支持されることになる。

 1月25日に1月限が納会を迎えたが、受渡価格は218.30円となった。2022年12月限の211.00円を7.30円上回っている。ただ、3カ月連続で210円台になっており、大きな変化は確認できない。受渡高は62枚と2022年12月限の175枚を大きく下回っている。これは2017年5月限以来の低水準であり、受け腰が強かったとは言い難い状況にある。

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