【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、上海高と円安で堅調
連載 2022-12-12
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=220円台後半まで値上がりし、10月19日以来の高値を更新した。上海ゴム相場がじり高傾向を維持したこと、為替が円安に振れたことを手掛かりに、買い優勢の展開になった。11月16日の直近高値221.80円を上抜いたことでチャート主導の買いも膨らみ、上げ幅を拡大している。
上海ゴム相場は、1トン=1万3,000元の節目水準まで値上がりする展開になった。中国政府が新型コロナウイルス対策の規制緩和の動きを強めていることで、中国経済に対する信頼感が回復していることがポジティブ材料視されている。
中国政府は高リスク地域を除いて必要以上に強力な行動規制を導入しない新指針を打ち出した。さらに感染者に対する隔離措置の緩和、検査を簡素化する方針なども打ち出している。行動規制強化に対する大規模な抗議デモや暴動を受けて、早くも政策の見直しに着手した格好になる。あまりに急激な政策変更で一部に混乱も見られるが、中国経済に対する信頼感を回復させる動きという意味では、ゴム相場に対してポジティブである。
一方、世界経済の減速懸念が急激に高まっていることが、原油や非鉄金属相場の上値を圧迫している。インフレを抑制するための各国の強力な利上げ対応に実体経済が耐えられないのではないかとの懸念が高まっている。米金融大手トップからも、2023年のリセッション(景気後退)入りのリスクが相次いで指摘されている。資源需要の先行き不透明感から原油相場は今年最安値を更新し、株価も調整色を強めている。
しかし、上海ゴム相場に関してはコモディティ市場全体のトレンドに逆行高になっている。ゴム相場に限定された買い材料が見当たらない中で投機色の強い値動きとの評価もあるが、いずれにしても戻り高値更新の展開が続いたことが、ボックス傾向を強めていたJPXゴム相場も押し上げている。
また、為替市場で急激な円高圧力が一服していることもポジティブ。12月1日の1ドル=133.60円を円高のピークに、136円台後半まで切り返している。為替相場の目線でも、安値修正の展開が支持された。
タイ中央ゴム市場の現物相場は、12月8日時点でUSSが前週比1.4%高の1キロ=44.80バーツ、RSSが同1.2%高の47.35バーツ。消費地相場の堅調地合を受けて、産地相場もじり高の展開になった。今年の最安値圏から若干の切り返しを見せている。集荷量はUSS、RSSともに安定しており、特に供給リスクを織り込む必要性は見当たらなかった。JPXゴム相場のサヤは、期近から期中にかけて引き続きフラット状態にある。
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