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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、景気減速と台湾情勢で軟調

連載 2022-08-08

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=220円台後半まで値下がりし、年初来安値を更新する展開になった。

 ペロシ米下院議長の台湾訪問を受けて、台湾情勢の不安定化、米中関係悪化が中国経済のリスク要因と評価される中、上値の重い展開になった。為替相場が円高に振れたことも嫌気され、大きく値位置を切り下げている。

 上海ゴム先物相場は7月22日の1トン=1万1,490元をボトムに8月1日の1万2,335元まで切り返していたが、その後は1万2,000元の節目水準まで軟化している。

 8月2日夜にペロシ米下院議長が訪台し、翌3日に蔡英文総統らと会談した。過去25年間で最も高位の米政治家による訪台であり、中国政府は強く反発している。このため、台湾有事のリスク、さらに米中対立激化への警戒感が中国市場で資産価格を圧迫し、上海ゴム相場も上値を抑えられた。原油や鉄鉱石、非鉄金属なども、中国経済の先行き不透明感に上値を圧迫されている。

 また、中国の7月製造業PMIが前月の50.2から49.0まで予想外に低下したこともネガティブ。6月に続いて7月も中国経済は復調傾向にあるとみられていたが、実際には活動の縮小を意味する50割れになっている。7月米ISM製造業指数も前月の53.0から52.8まで小幅ながら低下している。米中など世界経済の減速懸念も改めて上値圧迫要因になっている。

 タイ中央ゴム市場の集荷量は、8月4日時点でUSSが前週比1.7%安の1キロ=54.06バーツ、RSSが同2.2%安の56.02バーツ。8月入りした後も集荷量は安定しており、産地相場は値下がり傾向を維持している。

 タイでは首都バンコク周辺などで豪雨による洪水被害発生も報告されているが、現時点ではゴムの集荷環境に対する大きなダメージまでは確認できない。台風シーズンのために突発的な供給障害が発生するリスクに注意が求められるが、潜在的なリスク要因との評価に留まっている。また、現状では急ピッチな値下がり傾向を受けて、農家が在庫売却を渋るような動きも確認できていない。

 一方、円相場のボラティリティが高まっているため、JPXゴム相場は為替相場からも大きな影響を受けている。ドル/円相場は前週の1ドル=136~137円水準に対して、8月2日には130.39円までの急激な円高・ドル安になった。このため円建てゴム相場は為替要因からも下押しされやすくなった。ただ、その後は134円台まで切り返しており、円高圧力が収束に向かうか否かも注目度が高まっている。

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