【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、中国指標悪化で急反落
連載 2021-07-05
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=244.00円をピークに、220円水準まで急落する展開になった。前週は上海ゴム相場主導で安値修正の動きが優勢になっていたが、その上海ゴム相場が反落したことで、JPXゴム相場も反落している。ここ最近としては出来高が高水準であり、投げ売りが膨らんだことで、下げ足が加速したことが窺える。1月4日以来の安値を更新している。
上海ゴム先物相場は前週に1トン=1万3,000元台を回復していたが、そこからさらに安値修正を進めることに失敗し、1万2,000元台後半での取引に回帰している。一応は月末・月初に発表された中国経済指標が弱めだった影響が指摘されているが、中国コモディティ市場でも鉄鉱石や銅相場は底固さを見せる一方、ゴムと石炭相場の軟化が目立つなど、明確な方向性を打ち出せているとは言いがたい状況にある。
中国の5月工業利益は、前年同月比36.4%増となった。前月の同57.0%増から伸びが鈍化している。また6月製造業PMIは、国家統計局発表で前月の51.0に対して50.9、財新発表で同52.0に対して51.3とともに悪化している。
直ちに中国経済の減速に対する警戒感を高めるような数値ではなく、実際に中国株は底固く推移している。ただ、中国製造業部門の活動と収益鈍化の背景としては、半導体不足などサプライチェーンの混乱と同時に、素材市況高騰の影響が指摘されている。このため、中国政府が製造業支援のために改めてコモディティ価格の統制を強化するのではないかとの警戒感が、ゴム相場の上値圧迫要因として指摘されている。
実際にはファンダメンタルズでの説明が妥当と言えるのか疑問視されるような値動きが続いているが、いずれにしても上海ゴム相場が安値修正をさらに進めることに失敗し、JPXゴム相場では投げ売りが膨らんだことが、相場の急落を促している。
タイ中央ゴム市場の現物相場は、7月1日時点でUSSが前週比6.3%安の54.31バーツ、RSSが同8.6%安の54.73バーツ。消費地相場の軟化を受けて、産地相場も一段安になっている。
産地では適度な降雨が観測されていることもあり、集荷量は安定している。USS、RSSともに緩やかな増加傾向にある。東南アジアでは、新型コロナウイルスの変異株の感染が拡大しており、特にインドネシアでは行動規制が大幅に強化されている。このため、今後の供給不安も高まっているが、特に供給サイドのリスクを価格に反映させるような動きは見られない。産地主導で安値修正を打診するような動きはみられなかった。
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