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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、上海ゴム主導で軟調地合に

連載 2021-04-05

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=240円台中盤まで一段安になった。欧州など世界的に新型コロナウイルスの感染拡大が報告される中、上値の重い展開が続いている。非鉄金属や原油相場は大きな動きを見せていないが、ゴム相場は上海ゴム主導で下値を切り下げており、約1カ月半ぶりの安値を更新している。為替が1ドル=110円の節目を突破する円安に振れていることはポジティブだが、値下がり傾向に歯止めを掛けることはできなかった。

 上海ゴム先物相場は、3月19日に1トン=1万5,000元の節目を大きく下抜いたのに続き、31日には1万4,000元も完全に下抜く展開になっている。中国市場でも、鉄鉱石や石炭、銅など他の産業用素材市況は下げ一服感が目立つが、ゴム相場のみが独歩安とも言える状況になっている。何かゴム市場に特有のネガティブ材料が浮上している訳ではなく、投機色の強い値動きになっている。1万4,000元水準で下げ一服感が広がる場面もみられたが、結果的には底入れに失敗している。

 需要サイドでは、新型コロナの感染被害拡大が警戒されている。欧州以外にもインドや中南米で新規感染者数や死者が急増傾向にある。変異株の感染が広がっている模様であり、日本も含めて先行き不透明感が強い。

 主要市場である中国や米国では感染被害が限定されており、ワクチン接種も急ピッチに進んでいるために、一時的な混乱状況との見方も強い。ただ、ロックダウン(都市封鎖)に踏み切る地域が増えている。そうした地域では新車販売の鈍化は避けられないだけに、マーケットの警戒感は強くなっている。昨年に続いて今年も新型コロナが主な相場テーマであることに変わりはない。

 バイデン米大統領は向こう8年で2兆ドルをあてる大規模インフラ投資計画を発表した。トラックなどの商用車向けタイヤ需要を喚起する動きになるが、マーケットの反応は限定された。

 一方、産地では減産傾向が強くなっている。タイ、ベトナム、ラオス、カンボジアなどでは乾季が進んでおり、集荷量が抑制されている。タイ中央ゴム市場の現物相場は、4月1日時点でUSSが前週比0.2%高の1キロ=61.00バーツ、RSSが同2.0%安の62.73バーツとなっている。消費地相場と比較すると底固さも認められるが、上海ゴム相場の急落動向を無視して産地主導の上昇トレンドを形成するまでのエネルギーはなかった。

 パンデミックの広がり状況と同時に、上海ゴム市場における投機マネーの動向が重視される地合になっている。

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