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連載「つたえること・つたわるもの」104

五輪のモットー〈より速く、より高く、より強く〉を改めて見直す!

連載 2021-01-12

出版ジャーナリスト 原山建郎

 昨年末、政府が呼びかけた「勝負の三週間」お願いキャンペーンが裏目に出て、東京都の新型コロナウイルス新規感染者数は先週から2000人台になるなど、過去最高を毎日のように更新しつづけている。全国の新規感染者数は連日7000人台となり、累計の感染者数も約30万人となった。先週(1月7日)発出された二回目の緊急事態宣言も、いつになったら感染者数が減少に向かうのか、また2月末に開始されると政府がいうワクチンはどれほど抑制効果があるのか、だれもその答えを示すことができない。

 また、ここにきて英国・南アフリカ・ブラジル由来の新型コロナウイルス変異種が、各地の空港検疫で立て続けに検出されており、1月10日時点で変異種感染者は34人が確認されている。これらの変異種ウイルスは従来型(武漢・ヨーロッパ由来)の新型コロナウイルスより数倍も感染力や重症化率が強い可能性があり、イギリスやアメリカで接種中のワクチンが有効かどうかは、いまのところ不明だという。

 1月3日には、バドミントンで海外遠征直前に桃田賢斗選手に陽性が判明。他の選手は陰性だったが代表チームは遠征を断念し、解散した。1月10日に初日を迎えた大相撲初場所では、PCR検査で陽性となった力士65人(横綱白鵬など十両以上の関取16人を含む)が休場し、今後も新たな感染者が出れば途中で中止の可能性も否定できないなど、本来であれば健康には絶対の自信があるはずのスポーツ界でも、令和のコロナ禍がこれまで以上の猛威を振るっている。また、白血病の闘病を終えて復帰した競泳の池江璃花子選手が、東京・国立競技場から東京2020開催への期待を込めて昨年7月に発信したメッセージは記憶に新しいが、1月9・10日の東京都新春大会には、コロナ感染リスク回避のため欠場したという。

 菅義偉首相は年頭挨拶のなかで、「感染対策を万全にして、安心・安全な(東京オリンピック・パラリンピック)大会を実現したい。私としては、世界でワクチン接種が始まっており、日本においても、2月下旬までにはなんとか始めたいと思っている。こうした対応をしていくことによって、国民の雰囲気も変わってくるのではないか」と語っている。しかし、「勝負の三週間」の後半、12月16日に実施されたNHKの世論調査では、今夏に延期された東京五輪を「開催すべき」27%、「中止すべき」32%、「さらなる延期」31%、「わからない・無回答」10%だった。そして、二度目の緊急事態宣言が発出された翌週の1月11日に発表された共同通信の電話アンケートでは、「開催すべき」14.1%、「さらなる延期」44.8%、「中止すべき」35.3%、「わからない・無回答」10%という結果が出ており、今夏の東京五輪開催を「中止・再延期すべき」という声を合わせると、アンケート全体の8割以上を占めている。

 思い返せば、昨春(3月24日)、安倍晋三前首相は森喜朗JOC会長、小池百合子都知事、橋本聖子五輪担当大臣同席のもとに、バッハIOC会長と電話会談を行ったあと、「今後、人類が新型コロナウイルス感染症に打ち勝った証として、完全な形で、東京オリンピック・パラリンピック(※以下、東京五輪)を開催するために、(中略)日本として、開催国の責任をしっかりと果たしていきたい」とコメントしたが、その後、4月7日に緊急事態宣言(当初7都道府県を対象地域、のちに全都道府県に拡大)を発出し、当初は1カ月の予定であったが、5月4日に5月末まで延長された。

 このとき、感染拡大の波はいったん沈静化したかに見えたものの、当初の予定を早めたGoToトラベルやGoToイートキャンペーン以降は、秋から冬にかけて再び感染者数が急上昇し、あれよあれよという間に、二度目の緊急事態宣言を迎えることになった。このような非常事態にもかかわらず、後任の菅首相は、昨年末(12月21日)の段階で「来年の夏に人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として、東京で五輪・パラリンピックを開催する」と述べており、安倍前首相と全く同じコメントを繰り返している。

 さらに思い返せば、東京五輪招致が決まったのは、3・11(2011年3月の東日本大震災)から2年後の2013年9月だった。このときは東京五輪招致よりも東日本大震災の復興対策、とりわけ福島第一原発事故の後始末を優先すべきという意見が多かったが、安倍首相(当時)の「福島原発問題はアンダー・コントロール(制御)され、汚染水の影響は港湾内0.3平方キロの範囲内で完全にブロックされている」というスピーチによって押し切られた。3・11から10年後となる現在、0.21パーセントの復興特別所得税が残っているだけで、希釈した放射能汚染水の海洋への放出問題、老朽化した原発再稼働問題、核のゴミ(原発の使用済み燃料)の最終処分場をめぐる問題では、マスコミ報道がわずかに散見されるのみである。

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