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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、高値更新後に調整売り

連載 2019-12-02


マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=192.50円まで上値を切り上げた後、180円台後半まで上げ幅を削る展開になった。

 米中通商協議の進展期待を背景とした世界的なリスクオン環境を背景に190円の節目を突破し、7月2日以来の高値を更新している。ただ、10月3日の154.30円をボトムに目立った調整局面もなく最大で38.20円(24.8%)もの急伸となる中、11月末に向けては調整売りを入れる動きも強く、190円台を維持することには失敗している。

 11月25日に11月限が納会を迎えたが、納会値は172.00円となり、10月限の147.10円からは24.90円の値上がりになっている。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,940元まで急伸して3月4日以来の高値を更新したが、その後は1万2,000元台中盤まで軟化しており、前週比では小幅ながらマイナス圏での取引になっている。

 タイ中央ゴム市場の集荷量は、目立った変化を見せていない。現物相場は、11月28日時点でUSSが前週比0.9%安の39.54バーツ、RSSが同0.6%高の41.55バーツ。産地相場はほぼ横這いだが、為替市場でタイバーツ高・円安が進行したことは、円建てゴム相場の押し上げ要因になる。

 米中通商協議に関しては、協議の難航も報告されているが、最終合意は可能との見方が強い。米中両国首脳が合意文書署名に意欲を示しており、「第一段階の合意」については、越年するか否かの議論はあるものの、最終的にはまとまる可能性が高い。

 この流れで米国株は過去最高値を更新し、銅や原油など他の産業用素材市況も底固く推移しており、ゴム相場も堅調地合になっている。ただ、銅相場などは安値圏での修正高の範囲に留まっており、ゴム相場の地合の強さは他マーケットと比較して、異常さが目立つ状況になっている。

 当限に目を向けると、10月25日の147.00円をボトムに170円水準まで切り返しているが、9月18日以来の高値更新に留まっている。期先限月に対し異常な上昇圧力が働いた状態になっている。

 こうした動きを主導しているのは、海外ファンドである。これまでの下げ相場で売り込んできたファンドが、米中通商合意への期待からショートカバー(買い戻し)を急ピッチに進めている。更に、月末に向けては新規で買いポジションを構築する動きもみられ、極めて投機色の強い相場環境になっている。このまま過熱感を抱えた状態で一気に200円台乗せを試すのか、それとも過熱感解消の調整局面に向かうのかが焦点になる。

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