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【マーケットアナリティクス】

天然ゴム相場の10月後半のレビューと11月前半のアウトルック

連載 2016-10-31


マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努

10月後半のレビュー

 10月後半のTOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1㎏=182.20円での取引開始後、10月17日の高値は184.60円に達し、5月9日以来となる約5か月半ぶりの高値を更新した。主に原油高や円安といった外部環境からの支援を受けた値動きである。その後は、原油高と円安の一服から10月21日の173.50円まで急反落したが、そこから本格的に値崩れを起こすことはなく、月末にかけては183円水準まで改めて上昇する展開になっている。

 10月前半は原油高連動で急伸したが、その後は原油相場が反落したにもかかわらず、ゴム相場の大きな値崩れは回避され、逆行高となる場面も目立つ状況にある。石油輸出国機構(OPEC)の実質減産方針が原油価格を押し上げたが、足元ではその効果に懐疑的な見方が広がっている。10月中旬にはこうした原油安がゴム市場でも調整売りを誘う場面もみられたが、その後は上海ゴム相場の高止まりや円安効果もあって、ゴム相場はなお高値圏を維持している。

 上海ゴム相場は1トン=1万4,000元水準で揉み合う展開になっている。特に相場が上昇するような理由は見当たらないが、鉄鉱石や非鉄金属も10月下旬に入ってから強含んでおり、投機筋の物色意欲が強くなっている。仕掛け的な売買で乱高下しているために仕手戦が行われているといった指摘も聞かれるが、いずれにしても上海ゴムが安値を拒否していることが、東京ゴム相場の高止まりを促している。

11月前半のアウトルック

 10月前半は原油高連動で上昇したにもかかわらず、同後半は原油安にも関わらず下げ渋るなど、やや相場テーマが絞り込みづらい状況になっている。マーケットの関心は高止まりしている上海ゴム相場の次の動向に集中しており、高値ボックス化している上海ゴムが上下どちらかの方向にブレイクするのかが最大の焦点になる。需給や外部環境(原油や円相場など)よりも投機色が強まっている上海ゴム相場の動向が注目されている以上は、不安定化している上海ゴム相場の次の値動きに注目せざるを得ない。

 産地では、ラニーニャ現象の影響で豪雨や洪水被害が続いており、天然ゴムの集荷量は抑制されている。時期的には増産期に当たるが、特に未燻製シート(USS)の集荷量の落ち込みが目立つ状況にある。ただ、RSS現物相場は10月14日の1㎏=56.17バーツに対して57.33バーツまでの上昇に留まっており、産地主導の値上がり圧力は限定されている。タイ産オファー相場も170セントから173セントまでの上昇に留まっている。やや供給不安が高まっているが、産地でも上海相場の動向に一喜一憂しており、需給環境は余り材料視されていない。供給障害が本格化すれば、東京ゴムは200円台回復の可能性も浮上するが、現段階では潜在的な上昇リスクとの評価に留まる。

 相場テーマが定まらず、上海ゴム相場の動向次第で急伸も急落もあり得る極度に不安定な相場環境になっている。需給タイト感が浮上している訳ではないために持続的な上昇トレンドが形成される状況にはないと考えているが、現状では投機色を強めている上海ゴム相場が一段高を試す可能性が否定できず、その際に東京ゴムが現在の値位置で一段高を拒否できる可能性は低いだろう。上海ゴムも、一日の値動きの中でも急伸と急落を繰り返す場面が目立ち、引き続きボラティリティの高い大きめの値幅を想定しておきたい。

【レンジ】
10月後半の取引レンジ 173.50~184.60円
11月前半の予想レンジ 170.00~197.50円

【プロフィール】
小菅 努(こすげ つとむ) マーケットエッジ株式会社 代表取締役

 1976年千葉県生まれ。筑波大学卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。コモディティ市場や金融市場の調査・研究・分析業務に従事。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)

http://www.marketedge.co.jp/
https://twitter.com/kosuge_tsutomu

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