【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、米中対立で安値更新が続く
連載 2018-11-26
マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努
TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1㎏=150円台前半、TSRが130円台後半までそれぞれ下落した。RSSは5週連続で年初来安値を更新しており、2016年8月以来の安値圏での取引になった。
上海ゴム先物相場は、1トン=1万1,000元台前半でのボックス相場を下抜けし、1万元台中盤から後半まで下落している。約4週間にわたるボックス相場を割り込み、トレンドは依然として下向きであることが再確認されている。
中国経済の減速リスクが、引き続きゴム相場の上値を圧迫している。11月30日~12月1日の20カ国・地域(G20)首脳会合に合わせて米中首脳会談が予定されているが、その場で通商合意に向けての進展がみられず、貿易戦争の長期化が中国経済を本化的に下押しするリスクが高まっている。
11月16日には、トランプ米大統領が中国側から142項目にわたる行動計画が提出されたことを明らかにし、通商合意に至る可能性が指摘されていた。しかし、17~18日に開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)では、米中対立の根深さから共同宣言を採択できない異例の状態になり、貿易戦争が来年まで持ち越されるリスクが警戒されている。
米中当局者の発言によって地合が急激に改善する可能性もあるが、米中首脳会合に向けて不安定な展開が続き易い。
特に上海ゴム相場が1万1,000元の節目を完全に割り込んだインパクトは大きい。上海ゴム相場は概ね1,000元単位の値幅で動く傾向が強く、このまま1万元の節目を打診する可能性が高まっている。2016年上期はこの1万元の節目水準で下げ一服となったが、その当時の東京ゴム相場の値位置は150円の節目水準であり、150円水準でサポートされるか否かが注目されている。
需給環境については、特に目立った変化はみられない。タイ中央ゴム市場の現物相場は、RSSが16日の1㎏=38.14バーツに対して21日時点では37.84バーツ、RSSが同40.48バーツに対して40.05バーツとなっている。安値を更新するまでの勢いは見られなかったが、年初来安値圏での取引が続いている。特に農家の売り渋り、生産トラブル、生産国の政府の介入といった動きも報告されておらず、供給サイドの要因でゴム相場の反転を促すような動きは見送られている。
産地ではタッピング(ゴム樹液の採取)を阻害しない程度の適度の降雨が観測されており、ゴムの他にパーム油やコメに関しても良好な生産環境が報告されている。
ダウントレンドが続く中、米中通商合意への期待感が強まった際に、安値修正がみられるかが問われる程度である。
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