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連載「つたえること・つたわるもの」(50)

視覚障害者への〈声かけ・サポート〉、どう介助したらよいか。

連載 2018-10-09

 ところで、〈声かけ・サポート〉の主たる相手である「視覚障害者」について、私たちはどのくらい正確に理解しているだろうか。などと偉そうなことを言うこの私も、今回のコラムの資料集めを通して、初めて知ることが多くあった。〈声かけ〉をする前に、視覚障害者の事情についてよく理解しておきたい。

☆ 白い杖を持っているからといって、すべての方が「全盲」とは限らない。「目の不自由な人」のことを視覚障害者といい、視覚に障害のない人は晴眼者という。全くみえない人(全盲)から光を感じる人(光覚)、メガネなどで矯正しても視力の弱い人(弱視)、見える範囲の狭い人(視野狭窄)などがあり、半数以上は「弱視」といわれる。見えにくさの程度は人によって異なる。視覚障害者は、人や障害物にぶつかることを未然に防ぐために、白杖を使用することが法律で義務付けられている。

☆ 神奈川県障害福祉課の聞取り調査(視覚障害者1級=両眼視力の和が0.01以下、500人対象)によると、道路でいつも危険を感じている(19%)/ときどき危険な思いをする(56%)/通行人で声をかけてくれる人が、いる(20%)、いない(60%)、その他(20%)/ホームからの転落・転落しそうになったことがある(50%以上)であった。視覚障害者の外出には、さまざまな危険が待ち構えている。

☆ 視覚障害者は、駅のホームをよく「欄干のない橋」にたとえる。橋(駅のホーム)に欄干がなければ、ちょっとしたはずみで川(線路)に落ちてしまう。近年、大都市圏では主要駅や地下鉄にホームドアが徐々に設置さているが、全国的には視力障害者の転落事故がまだあとを絶たない。また、ホームにある黄色の点字ブロック(丸い粒状に並んだ点は「警告ブロック」、細長い線状の平行な突起は「誘導ブロック」)は幅がわずか30センチ、うっかりしてまたぐと線路に転落することがある。

 駅ホームでの視覚障害者への〈声かけ・サポート〉について、埼玉県や静岡県の「声かけ・サポート」ハンドブックがとてもよくできている。まず、埼玉県のハンドブックから一部を要約して紹介しよう。

☆ いきなり触れたり、手を引いたりしない。まず声をかけ、介助が必要かどうか相手の意向を確かめる。

☆ 一般的には、介助者が白杖を持っていない側の半歩前に立ち、被介助者に腕をつかんでもらう。

☆ 目的地までの距離と方向を具体的に(足下のブロックをたどってまっすぐ進み……など)説明する。

☆ 階段(エスカレーター)で移動する場合には、まず段の始まる手前で階段である旨を伝える。階段に直角に近づき、一時停止し、「上ります(下ります)」と声をかけてから歩きはじめる。階段が終わったら、「終わりです」と伝え、被介助者が最後の一段を上がった(下りた)のを確認して、いったん停止する。階段の途中で段の高さや踏み幅が変わるときも、いったん停止する。

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