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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、年初来安値を更新

連載 2018-09-17


マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1キロ=164.20円まで値下がりして年初来安値を更新した後、160円台後半まで小幅切り返す展開になった。

 上海ゴム相場は1トン=1万2,000元水準での保ち合いから安値修正の動きをみせたが、東京ゴム相場に対する影響は限定されている。

 引き続き産地からの売り圧力が強く、国際ゴム相場は値下がりしている。タイ中央ゴム市場の現物相場は、9月13日時点でUSSが前週比0.3%安の1キロ=41.59バーツ、RSSが同1.0%安の42.63バーツとなっている。急落地合が形成されている訳ではないが、今季最安値を更新しており、それと連動する形での東京ゴム相場の年初来安値更新は整合性が取れるものになっている。

 本来であれば生産国が市況対策に動くべき価格水準だが、タイの内閣広報官は予算手当が難しいことを理由に、当面の市況対策導入の検討は行われていないことを明らかにしている。新興国通貨危機が東南アジアにも波及し始める中、各国政府は財政収支の改善を最優先しており、ゴム市況に費やす財政手当が行えない状況になっている。

 一部で噂されていたタイ政府機関保有在庫売却の可能性は否定されているが、今後も政策要因で安値に修正を迫るのは難しい情勢になっている。

 このため、東京ゴム市場でも当限からの値崩れ傾向が強くなっており、当先では18.60円もの大幅な順サヤ(期近安・期先高)が形成されている。当限は150円台も割り込んでおり、産地相場安が東京ゴム相場を当限から押し下げる環境にあって、本格的な反発を促すのは難しい情勢になっている。

 フィリピン沖などでは大型台風が発生しているが、天然ゴムの主産地の気象環境は総じて安定している。やや多雨傾向が強くなっているが、これまで土壌水分が不足がちだったこともあり、大きな問題にはなっていない。引き続き洪水などによる突発的な供給障害のリスクには高いレベルの警戒感が求められるが、供給不安を価格に織り込むような動きは確認できない。

 中国の8月新車販売台数は前年比3.8%減となり、2カ月連続でマイナスとなっている。米中通商環境の不安定化に加えて、株安も消費者の自動車購入意欲に影響を与えている可能性が指摘されている。一方、米中通商協議が閣僚級レベルで再開される可能性も報じられている。しかし、こうした中国関連の動きは強弱ともに必ずしも重視されていない。株価との連動性も低く、季節要因に基づく需給緩和圧力が産地相場を下押しする流れに修正を迫るような動きの有無が注目されている。

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