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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、米中貿易対立で不安定化

連載 2018-04-09


マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1キロ=180円を挟んでやや上値の重い展開になった。今年最安値圏での取引が続いている。

 焦点となっているのは、引き続き米中貿易戦争のリスクである。米政府は4月3日、中国の知的財産権侵害に対して、制裁課税を行うリストを発表した。一方、中国側は4日に報復課税のリストを発表し、米中双方が課税カードを手中にして、けん制を行う状態になっている。

 仮に米中双方が課税をし合う事態になれば、両国経済のみならず世界経済にも大きな影響が生じる可能性があり、資源価格全体に対する下押し圧力が警戒される状況になった。

 一方で、米中双方の当局者は貿易戦争回避のための交渉に対してはオープンな態度を示している。具体的に交渉が行われているのか、行われているとすればどのような内容になっているのかは明らかにされていないが、米系メディアでは水面下での交渉が報告されている。

 現状では、両国が互いに課税を行うか否かも含めて判断を下すだけの十分な材料がなく、マーケットもリスクオフを基本としながらも、本格的にリスク資産売りを進めることは躊躇する不安定な地合になっている。これは他の産業用素材市況、更には株価にも共通した値動きであり、ゴム相場もこうしたグローバルな流れの中で安値低迷状態を踏襲するだけの展開になっている。

 上海ゴム相場に関しても、1トン=1万1,000元台前半で方向性を欠いている。中心限月の切り替えで継足ベースでは小幅上昇しているが、期近は1万1,000元水準で変化は見られない。

 一方、産地相場は堅調地合を保っている。タイ中央ゴム市場のRSS現物相場は1キロ=48バーツ台を維持しており、急伸する様な動きこそみられないが、東京や上海ゴム相場などとの比較では、底固い展開が維持されている。

 産地では東南アジアとマレーシアの降水量は安定している一方、タイ、ベトナムなどでは乾燥状態が続いており、減産期型の気象環境が維持されている。3月末で期限切れを迎えたタイ、インドネシア、マレーシアの輸出規制に関しては、特に延長の議論も行われずに終了している。ただ、5月の再開に向けての協議も報告されており、生産国の動向に対する失望感までは広がっていない。

 引き続き米中貿易戦争のリスク評価が中心になり、米中政府の動向を眺めながらの不安定な地合が続き易い。米中の貿易対立を高めるような動きがみられれば売られ、逆に貿易戦争回避に向けての動きがみられれば下げ一服となる。

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