「ゴム総合研究」拠点の必要性を促す
【インタビュー】日本ゴム協会会長高田十志和氏、情報・人の国際化を推進
その他 2017-07-10
「情報交換や人的交流を含めた“国際化”を推進しながら、国内においてはドイツにある“ゴム技術総合研究所”のようなオープン・イノベーション拠点の設立構想を一歩ずつでも具現化するチャンスをつかみたいと考えている」と、高田十志和日本ゴム協会会長(東京工業大学教授)は抱負を語る。高田会長はさる5月18日開催の第6回定時社員総会で2017―18年度の任期で新会長に選出され就任した。
■新会長に就任して
現状、ゴム協会の運営は順調でとりたてて大きな課題は見当たらない。ただ、昨年北九州で開催された国際ゴム技術会議(IRC)は、“国際化”をもう一段推進していく必要性を再認識させられる機会となった。中瀬古広三郎前会長は今回国際委員に名を連ねてくださることになったので、国際化推進に今後も尽力してくださると思う。
■国際化の意義
国際化と言っても情報交換から人的交流など幅広い。まずは昨年の国際ゴム技術会議においても、講演やセッションは英語で行われた。ISO会議などもそうだ。先進国をはじめ新興国、天然ゴムの産地である東南アジア各国とも英語で技術的、学術的国際交流が出来ることが基本だ。また、単純に英語力だけでなく国際会議などに積極的に参加し、場数を踏み、経験を積むことも大いに意義があると考えている。それらを考慮して、昨年度韓国とタイとでゴム科学・技術に関する交流が出来るよう国際交流協定を締結した。今後、さらに交流国を増やしていき、お互いに研究者・技術者を派遣したり受け入れたり出来る組織的な人材交流を積極的に推進したいと考えている。そうなってくると、当然事務局も国際対応力をつけていく必要が出てくることになるだろう。
■国内でのゴムに関わる研究者、技術者の育成について
現状、国内においてゴムの科学・技術をアカデミア側から研究する研究者は少なく、ほとんどが企業に入ってからゴム関連の技術を学び、専門家として育成されていく。当協会の役割のひとつに日本のゴム産業の向上につながる研究の推進がある。いま、アカデミアでは研究費の獲得に際し、「ゴム」の文言が入れにくいのが実情だ。理由はゴムに関わる研究はもう古く、新たな未来が開かれる可能性が少ないとみなされているからだ。しかし、実際はゴムに関する研究は新しい時代を迎えようとしている。これまで解明できなかった複雑な構造や反応メカニズムが、電子顕微鏡をはじめ各種解析装置や試験機の高精度化やスーパーコンピュータなどの活用によって明らかになりつつある。つまり、ゴムのもつ性質や構造、機能が実データで検証、裏付けが出来るようになり、ゴムの可能性をさらに追求する時代に入ってきている。これまで積み上げてきた研究や技術をこれらの新しい検証と繋ぎ合わせていくことで、また新しいニーズや高性能化、付加価値を生み、同時に新しいマーケット形成も可能だと感じている。
■“ゴム技術総合研究所”のようなオープン・イノベーション拠点の設立
日本のゴム産業は世界的に見てもタイヤをはじめ自動車部品などで世界トップクラスの技術を誇っている。企業間での競争は研究や技術面で大変重要なことだが、一方で限られたものでもある。ドイツのようなゴム研究の先進国には大学や企業間のしばりが無い開かれた研究拠点「ゴム技術総合研究所」があって、その成果をベースとして各企業独自の高い研究開発につなげている。今や巨大なゴム消費国である中国にも「ラバーヴァレー構想」のもとに拠点が作られている。日本でもこれまでに幾度と無く「ゴム技術総合研究所」設立に向けた提案はあったが実現できなかった。機も熟してきたようなので、さらなる日本のゴム技術・産業発展の支えとなる研究拠点設立の必要性は非常に高まっていると言える。
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