日本ゼオンとQunaSysは、研究開発における新たなアプローチとなる数理モデルベースを幅広い製造業へ展開するため、業務提携契約を締結した。

 同スキームは、日本ゼオンが長年培ってきたポリマーをはじめとする材料開発の知見・方法論と、QunaSysが有する数理モデリング技術を組み合わせ、研究者の現象理解と意思決定高度化を支援する研究開発アプローチとなっている。

 日本ゼオンはこれまで、社内の材料開発テーマへの適用や人材育成を通じて、数理モデルベース開発の方法論と活用知見を蓄積してきた。今回の業務提携により、今後は両社が連携し、共同研究や PoC、企業の個別課題に応じたソリューションの提供などを通じて、社外への展開を本格化する。

 ■数理モデルべース開発の背景
 実験データ、シミュレーション、AI・MI(マテリアルズ・インフォマティクス)など、多様な情報を活用できる環境が急速に整いつつある昨今の研究開発の現場では、利用できるデータや解析結果が増えたことで、考慮すべき要因や仮説も飛躍的に増加し、複雑な現象の本質を捉えることが難しくなっている。

 こうした課題を解決するには、まず現場が語るメカニズム仮説をそのまま数学の言葉で表現し、その論理展開を定量化することが有効となっている。その上で、次に取るべき施策などネクストアクションプラン策定のための判断材料を数式(数理モデル)をベースに導き出すことが重要になってくる。この論理的な課題解決のアプローチを、さまざまな課題に対して幅広く適用できるよう、独自の研究開発スキームの構築に着手した 。

 なお、ゼオンとQunaSysは、2022年3月に資本・業務提携を行い、機械学習・自動実験・量子コンピュータ等の先進技術をいち早く材料開発に役立てることができるデータマネジメントプラットフォームの構築を目指している。

 作成された数理モデルを効率的かつ効果的にデータ検証する、あるいは数理モデリングのベースとなる良質な仮説を創出するなどの面で、データマネジメントプラットフォームと同スキームは互いの強みを生かし合う関係性にある。

 ■同スキームのポイント
 数理モデルベース開発は、数理モデルを単なる予測ツールではなく、研究者の思考と意思決定を支援する基盤として活用する研究開発アプローチであることが他と異なるポイント。同アプローチでは、目的定義、要因分解、仮説整理、数理モデル化、検証・更新、結果反映という一連のプロセスを通じて、開発現場で活用可能な数理モデルを構築する。

 数理モデルの価値は、予測精度の向上だけではなく、「現象の本質の理解」「検証すべき仮説の絞り込み」を行った上で、研究者が次に取るべきアクションを合理的に判断できる状態を実現することにある。さらに、その現象理解を「事業価値を高めるために、次に何をすべきか」という具体的な意思決定へと繋げることで、単なる研究開発にとどまらず、事業価値創出までを支援する。

 数理モデルベース開発を実践するためには、数理モデリング技術だけでも、材料開発の知見だけでも十分ではない。日本ゼオンが有する材料開発における豊富な知見・方法論と、QunaSysが有する数理モデリング技術を組み合わせることで、数理モデルベース開発という新たな研究開発アプローチの実践を加速する。