連載「ゴムの科学と技術のはなし ~文系と理系をつなぐゴム入門講座~」3
第1章『最初にぜひ知っておきたいゴムの常識』(その2)
ラバーインダストリー 2021-09-04
ロンドン大学クイーンメリーカレッジVisiting Academic Staff 深堀 美英
1 合成ゴムの生産量と消費量
前回お話ししたように、第1次世界大戦の勃発を境にして天然ゴムの供給がひっ迫したドイツでは合成ゴムの研究が盛んになり、大戦後はドイツやアメリカでブタジエンゴム(BR)、スチレン―ブタジエンゴム(SBR)や天然ゴム(NR)と同じ化学構造を持つイソプレンゴム(IR)など、多くの合成ゴムが工業化された。
表1は日本における合成ゴムの2019年度の出荷(生産)量である。合成ゴムの中ではSBRが最も多い。ここには天然ゴムとの比較はないが、2018年度の世界での比較で見ると、合成ゴムの総生産量は1,530万トンで天然ゴムの総生産量(1,400万トン)を上回っている。ただし表1と合わせてみると、単独のゴムとしてはやはり天然ゴムが飛びぬけて多いことがわかる。一方、世界のゴムの消費量も1963年以来、合成ゴムが天然ゴムを上回り、日本でも1966年以降は合成ゴムの消費量が天然ゴムを上回っている。現在では天然ゴムの消費量が約40%、合成ゴムの消費量が約60%と言われている。
天然ゴムの価格が気候やその他の要因によって変動するため天然ゴムと合成ゴムの価格比較は難しいが、あるデータを参考にした概算値として比較すると、天然ゴムの価格(キログラム当たりの円貨)が300円レベルの時、概略、SBRが260円、EPDMが300円、NBRが400円、CRも400円程度と思われる。
(次ページ:『2 合成天然ゴム(イソプレンゴム)の開発と現状』)
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