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連載「ゴムの科学と技術のはなし ~文系と理系をつなぐゴム入門講座~」3

第1章『最初にぜひ知っておきたいゴムの常識』(その2)

ラバーインダストリー 2021-09-04

2 合成天然ゴム(イソプレンゴム)の開発と現状

 天然ゴムがイソプレンの連なった連鎖体であることが1900年にドイツのハリスによって解明されて以来、イソプレンの合成によって天然ゴムと同一の化学構造を持つゴム(イソプレンゴム)を作ることは科学者の夢となった。しかし実際にイソプレンゴムが合成されたのはかなり遅く、1964年のことである。こうして得られたイソプレンゴムを天然ゴムと比較すると、多くの物性は概略、同等とみなせるが、引張り強度、伸びなどの破壊特性がやや劣る。これは化学構造にほんの少しの違いがあることや、天然ゴムに含まれているタンパク質が何らかの影響を与えているのではないかと想像されているがいまだに解明されていない。

 一方、イソプレンゴムの長所は天然ゴムに含まれているゲルやごみなどの不純物が少なく、品質に均一性があることが挙げられる。また、高分子鎖の長さ(分子量)を調整することによって加工性を改善できることも特徴の1つである。それにも関わらず、イソプレンゴムの生産量が少ない(表1)のは、筆者の想像であるが、天然ゴムに比べて破壊特性が劣り、また他の合成ゴムに比べても特に長所が見られないということではないだろうか。

(次ページ:『3 合成ゴムの種類とジエン結合の重要性』)

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